君とサヨナラする日1-9
なんで今更ながらこの服を着ているんだろうと、芽衣子をまじまじ見ていると、彼女の身に着けているアクセサリーも懐かしいものばかりだったことに気付いた。
ピンクの天然石が揺れるピアス。細い首にかけられたシルバーのネックレス。財布が入った小さなクラッチバッグ。ビジューがついたヒールの高いサンダル。
これらは皆、ヒモになる前の俺がアルバイトして稼いで、芽衣子にプレゼントしたものだった。
恋人に贈るプレゼントの定番、指輪がないのは俺なりに決めていたことがあったからだ。
指輪を贈る時はプロポーズする時だけだと決めていたから、芽衣子がいくら欲しがってもその願いは聞き入れなかった。
その代わり、“すっげえいい婚約指輪買ってやるから今は他ので我慢しとけ”と胸を叩いたもんだった。
あの頃は本気でそう思っていて、未来のことを真面目に考えていたのに、どこで歯車が狂ってしまったのだろう。
そんなことばかり考えていたから、今日の芽衣子がなぜ俺のあげたものばかりを身につけているのかなど、この時の俺は考えが及ばなかった。