君とサヨナラする日1-8
芽衣子が今着ているワンピースは、大学二年生の夏、付き合って初めて迎えた芽衣子の誕生日に、俺がプレゼントした服だった。
自分の服を買おうとブラブラ街を歩いていた時に、このワンピースを着たマネキンをショーウインドウ越しに見かけ、ふとこの服を着た芽衣子の姿が浮かんできたのだ。
レディースものしか取り扱っていない店に入るのは非常に勇気がいったが、誕生日プレゼントはこれがいいと直感的に閃いた俺は、なんとか自分を奮い立たせ店に入った。
慣れない店の雰囲気に圧倒されながら買ったそのワンピースは思ったよりも高くて、結局自分の服は買えなくなってしまったが、それでもいい買い物をしたと満足だった。
早速芽衣子にプレゼントを渡し、着替えてもらうと俺がイメージした通り、彼女によく似合っていた。
芽衣子も俺のプレゼントをとっても喜んでくれ、その夏はたくさんそれを着て一緒に街を歩いたもんだった。
しかし、流行のサイクルも影響してか、ここ数年で芽衣子はそのワンピースの袖を通さなくなった。
だから俺自身もこのワンピースのことは忘れていて、久留米がワンピースに言及していなければ、自分があげたことすら忘れていただろう。