君とサヨナラする日1-21
「あたし、茂がどんな気持ちなのか知りたくて、ゆっくり顔を離してからアイツの顔を見上げた。
そしたらアイツ、泣くのを我慢するような顔であたしをジッと見つめてた。
そんな表情、初めて見たから驚いて何も言えずにいたんだけど……、やがて茂はいつもみたいにイタズラっぽい笑顔を見せてから、
―――“一緒に死のう”って、たった一言だけそう囁いたの」
久留米は目を見開いたまま、
「……う、嘘だろ」
と、かすれた声を出した。
「あたしも最初は冗談だと思ってたけど、茂はあたしを抱きかかえながらどんどんこっちの方に来て……」
そう言いながら、芽衣子も少しずつ断崖の際へと歩みを進める。
「茂が本気なんだってのがわかると、あたしはすごく怖くなってきて、泣きながら必死で抵抗した。
でも、あたしが抵抗したところで、力でかなうはずもないでしょ?
結局、身動きとれないほど強く抱き締められたまま、あたし達はここから飛び降りた」
話を聞き終えた久留米の顔は真っ青になっていて、奴のこめかみからは粒のような汗が一筋流れ落ちていた。