君とサヨナラする日1-19
「最後のデートの日、茂はスッゴく機嫌よくて、あたしの服装とか髪型を“カワイイ”なんて、ふざけて誉めてくれたり、冗談を言ってたくさん笑わせてくれたり、まるで付き合い始めの頃みたいだった。
最近はずっと手なんて繋がなかったのに、その日はずっと手を離さないでいてくれて……、ホント嬉しかった」
このデートが最期になるのなら、せめていい思い出を作ろうと、俺はなるべく二人で笑っていられるように少し無理してはしゃいでいたことを思い出す。
「手島さん……、なんか有野さん、おかしいですよ」
さすがの園田も芽衣子の様子を不気味に思っているのか、不安気な顔をこちらに向けた。
「しっ、黙ってろ」
俺は園田に向かって、人差し指を唇にあて芽衣子の話を黙って聞くよう促した。
芽衣子がどこかおかしいのはとっくに気付いている。
でも、今は彼女の話を黙って聞くしかできないんだ。
妙な胸騒ぎがして、胸元の服をギュッと握りしめながらも、俺は芽衣子の顔をただジッと見つめていた。