君とサヨナラする日1-18
芽衣子は静かに微笑み、後ろ手を組みながら言葉を続けた。
「あたし、こないだ久留米くんのアパートに泊まったでしょ?
あの後帰ったら、茂に“どこ行ってたんだよ”って問い詰められたんだ。
うまくごまかせたらよかったんだけど、あたしが嘘吐くのが下手なのか、茂のカンが鋭かったのか結局浮気がバレちゃった。
せっかく久留米くんがあの時のこと、なかった事にしてくれたのにね。
あ、でも相手が久留米くんだってのは言わなかったから安心して」
いたずらっぽく舌を出す芽衣子だったが、久留米は一向に笑いもせずに黙って彼女を見つめるだけだった。
「それであたし、茂がめちゃくちゃキレて殴ってくるんだろうなって覚悟してたんだけど、アイツ、淋しそうに笑うだけだったんだ。
そして“別れてやるから最後のデートしようぜ”って、それだけ言ったの」
「茂……」
「あたし、浮気されても殴られても茂のこと好きだったけど、どこかで限界を感じてたと思う。
だから茂にそう言われた時、あたしは最後のデートをしてから別れる決意をしたの」
……あの頃の芽衣子はすでに俺に愛想を尽かしていたんだ。
それなのに俺は潔く身を引かず、挙げ句彼女の人生を奪おうと無理心中を図った。
自分の勝手過ぎる行動に反吐が出そうになった俺は、髪をかきむしり、自分に対して舌打ちをした。