君とサヨナラする日1-17
「……なあ、海が見たいって何もここじゃなくてもいいだろ?
もうクラゲだらけだけど、さっきの海水浴場の方がよかったんじゃねえか?
ここって、その……いわゆる自殺の名所だろ……」
意外にも幽霊などのオカルトチックな話が苦手な久留米は、ソワソワしながら言った。
「怖いんだ」
吹きさらす潮風に巻き上げられる髪の毛を抑えながら、芽衣子はクスクス笑った。
「そりゃ怖いだろ、なんでわざわざこんな薄気味悪い所に案内すんだよ」
「でもさ、ここから見える景色、きれいじゃない?
遥か海の向こうには白い雲がフワフワ浮かんでて、水面はキラキラ輝いて。
しかも人なんてめったに来ない場所だから、意外とデートにはもってこいだと思うんだよね」
芽衣子は遥か向こうの水平線を、眩しそうに目を細めて見ながら伸びをした。
そして、クルッと振り返って久留米を見てから、
「ここね、茂と最後のデートで来たの」
とポツリと呟いた。
「え……?」
久留米は太陽が眩しいのか、眉間にシワを寄せながら芽衣子を凝視していた。