君とサヨナラする日1-10
俺がそんなことを考えているうちに、久留米は一足先に食事を終えていた。
そして、芽衣子がようやく完食したのを見計らうと、おもむろにジーンズのポケットから煙草を出して火を付け始めた。
一気に煙草の匂いと白い煙が辺りに広がる。
「ああ、俺も煙草吸いてえなあ」
久留米が吸っている銘柄と俺の吸う銘柄は違うけど、他人が吸っているのを見ると無性に口寂しくなって、ついつい羨ましくなる。
たまらずに俺は、
「園田、煙草持ってねえか?」
と、園田の方を向いた。
「私、禁煙したんですよ。
セツコの奴、“煙草を吸わない人が好き”なんて言うから、頑張って止めたのに、アイツはあの小汚いオヤジと一緒になって煙草をバカスカ吸いやがって……」
心なしか、園田の眼鏡がキラーンと光ったような気がした。
そして俺は、園田が危険モードに入りそうになったのを察知したので、慌てて
「あ、そうだよな。
煙草は臭いし、身体に悪いし、いいことねえよ、うん」
と、話をそらした。
仕方なく俺は、うまそうに煙草を吸う久留米の姿を指をくわえながら眺めるだけだった。