人は忘れじ-8
「梨乃。ごめんな」
ううん。
ううん!
大丈夫です。
そんな苦しい顔をしなくても私は大丈夫ですから・・・・
私、今レン先輩にもらった「好き」で頑張れるから。
「飛鳥川ふちは瀬になる世なりとも 思ひそめてん人は忘れじ」
「え?なんて言ったの?レン先輩。もう一度!」
「飛鳥川 ふちは瀬になる 世なりとも 思ひそめてん 人は忘れじ」
レン先輩は私に覚えさせるように、ゆっくりゆっくり歌を繰り返した。
「意味は?意味は?」
「それぐらい自分で調べろ」
「うん・・・・」
「元気でな」
「レン先輩も元気で。・・・・・大好き」
「・・・・ありがとう」
最後はごめんじゃなくて
ありがとうって言ってくれた。
もうそれで十分。
あなたは、いつか私じゃない人を愛していくんだろう。
私も、いつかあなたじゃない人を愛していくんだろう。
そして。。。ハルト先輩も私ではない誰かを愛していくんだろう。
レン先輩
今。
あなたは元気ですか?
飛鳥川ふちは瀬になる世なりとも 思ひそめてん人は忘れじ
――この世に何があったって、好きになった君のことは忘れないよ――
(古今集687)