人は忘れじ-5
次の日。起きたらレン先輩はいなかった。
忘れられないのなら夢だと思えばいい。
たった1度でも好きな人に抱かれた思い出は
絶対に忘れない。
自分自身にそう言い聞かせながら
涙をぬぐった。
私が寝ていた場所以外のシーツは冷たくて。
レン先輩を思い出させるものは
何一つ残っていなかった。
私に何も残っていなくても
私のことがレン先輩の中に残っているのならそれでいい。
レン先輩は忘れないって言ってくれた。
たった一言の、好きという言葉さえ。
それさえもらえなかったけど。
あの時間は幸せだった。
大好き。
大好き。レン先輩。