君のいない所で-23
おそらく芽衣子も久留米も、長い時間をかけて次第に俺のことを忘れていくだろう。
せめて、最後に友達になれたコイツにだけは俺のことを忘れないでいて欲しかった。
まあ、友達って思ってるのは俺だけかもしれないけれど。
すると園田は、
「もちろん! こんなバカで憎たらしくて、クソ生意気なガキ、忘れたくても忘れられるわけがないでしょ?
これだけ一緒にいて楽しい友達、誰が忘れるもんですか」
と言い、さり気なく眼鏡の隙間に指を差し込み、目尻を拭っていた。
またコイツは俺を泣かそうとしやがって。
俺は口元を手で覆い、空を見上げながら必死で涙がこぼれないように耐えた。
……でも、俺の担当がコイツで本当によかった。
眼鏡を外し、目頭を押さえている園田を見ると、心からそう思えた。
でも、いい大人の男が二人して泣いてるなんてダサ過ぎだ。
湿っぽいのは俺達のガラじゃねえよな、園田?
俺はスクッと立ち上がって、遠くで輝くネオンや高速を走る車のライトを眺めながら、
「ああ、何が悲しくてこんなおっさんの胸で泣いたんだろ、なんかバカバカしくなっちまった。
お前のスーツ、加齢臭がほんのりしたし」
と涙声ながらも、いつも通りの憎まれ口を叩いてやった。
「し、失礼ですよ! 確かにこの季節は汗もかきやすいけど、エイトフォーしたりして身だしなみには気を使っているのに……」
そう言いながら、園田は自分の脇の辺りに鼻を寄せた。
そんな園田を見て小さく笑ってから、再び空を見上げたら、星が一つスウッと流れていった。
都会で見るのは珍しい流れ星。
何年かぶりで見る流れ星は、神様が俺にくれた最後のプレゼントのようにも思えた。