君のいない所で-22
園田はそっと俺の頭を撫でながら、なおも話を続けた。
「今の手島さんなら、次に生まれ変わって、それがたとえ過酷な環境だったとしても、精一杯生老病死と戦っていけると思います。
嫌なことから目をそむけ、安易に死を選び、心底後悔してしまったあなたなら、今度はどんなに辛いことがあっても、自ら命を断つような真似はしないと思いますよ」
「……でも、まだ俺はビビってんだ」
「大丈夫です! あなたは私が見込んだ人なんだから。
きっとどんな所に生まれ変わっても幸せを掴み取れる人になれると思うし、そう願います。
私ね、女性を見る目はないけれど、私が見込んだ人は必ずと言っていいほど、来世でも幸せになってます。
だから、手島さん。怖いとこばっかり見てないで希望を持って下さい!
“未来は白紙”なんですから、自由に描いていけるはずです」
園田はそう言って、俺に親指を立てて見せた。
「……お前、“未来は白紙”って、バック・トゥ・ザ・フューチャー3からパクったな」
俺は小さく笑って園田を見た。
「あ、バレちゃいました?」
「俺DVD持ってるって言ったじゃん、何度観たと思ってんだよ。
そういやお前、貸してくれって言ってたよな?
あれ、お前にやるよ。多分俺の実家宛ての段ボールの中に入ってるから、隙を見て持ってってくれ」
「……いいんですか?」
「もう、俺が持ってたってしょうがねえだろ?
大事なDVDだけど、お前にならあげてもいい。
だけど、一つお願いがあるんだ。
それ観た時くらいでいいからさ、……たまには俺のこと思い出してくれ」
俺は潤んだ瞳のまま、園田の顔をジッと見つめた。