君のいない所で-20
しんと静まり返った闇の中で、俺の鼻をすする音だけがやけに響く。
どれぐらい園田の胸で泣いていただろうか、嗚咽もようやく治まった頃に、園田が静かに口を開いた。
「手島さん、生老病死って言葉知ってますか?」
「……ショーロービョーシ?」
泣いてる顔を見られたくなくて、俺は俯いたまま園田の言葉を反芻した。
「はい、仏教用語なんですけど……。
人間は生きること、老いること、病むこと、死ぬこと、これらの四大苦と常に戦っていかなければいけないんです。
しかし死んでしまってもゴールはない。また新しい命を授けられ、まっさらな状態で生まれ変わる。
そしてまた生老病死と戦う……こんな堂々巡りの意味あるんだろうかと、よく考えるんですが、結局答えは出ない。
しかし、正解のないものに答えを見出そうと足掻いていく、この行動こそが意味のあるものなのかなあ、とも思うんです。
そうやって皆さん、死ぬまで生きていくんじゃないでしょうか」
園田は子供をあやすように、俺の背中をポンポン叩きながら語り出した。