君のいない所で-18
だが、ビールを口の中に入れた瞬間に思わず顔をしかめた。
「園田ぬりいぞ、これ」
俺がそう言うと、園田はあっさりと
「だって、昨日から鞄に入れっぱなしだったんですもの」
と言って、自分は平然とぬるいビールを飲み始めた。
大体手に持った瞬間からそんなに冷えてなかったんだよな。
そう思いながらじっと缶を見つめると、新しい事実に気付いた。
「……しかもこれ、ビールじゃなくて発泡酒じゃん。
ケチッてんじゃねえよ」
ビールと称して渡されたのは、発泡酒だったのだ。
「発泡酒ってビールと違うんですか? 似てるから間違えちゃった」
園田は自分の持っている缶をまじまじと見つめながら、首を傾げていた。
俺は、そんな園田を見て呆れたように笑いながら、
「ったく、手島茂最後の夜はこんな童貞中年とまずい発泡酒を手に過ごすのかあ。
なんともお粗末だな」
「ホント口の減らないクソガキですね。
童貞中年が嫌なら元カノのとこにでも行けばいいでしょ」
俺の言葉に不満そうな園田はぷいとそっぽを向いた。
「ま、これでなんとか我慢してやるよ」
そんな園田の背中をポンポン叩きながら、俺はチビチビ発泡酒を飲み始めた。