君のいない所で-17
すると園田は、使い古した皮の鞄の中から、何やら缶を二つ出してきて、一つを俺に寄越した。
「天使も霊も飲食の必要はないけど、たまには淋しい男同士飲むのもいいと思って、ビールを買ってきました。
あなたと過ごせるのももうわずかだし、今夜くらいは無礼講といきましょう」
「やったあ! 気が利くじゃん、お前」
俺はニッと笑って園田の頭をグシャグシャに撫でた。
「ちょっと、私の髪を気安く触らないで下さいよ」
園田が額にシワを寄せながら出ぐしで髪を撫でつける。
「お前は細かいことにいちいちうるせえからハゲてくるんだよ。
ま、そんな変わり映えしない髪なんてほっといて、サッサと飲もうぜ」
「まったく」
園田は呆れながらも缶ビールのプルタブをプシュッと開けた。
続いて俺もプルタブを開け、
「何に乾杯する?」
と、訊ねた。
「そうですね……、じゃあ、“女なんてクソ食らえ!”とか?」
「センスねえなあ」
「じゃあ、手島さんが音頭とってくださいよ」
「んー、じゃあ“芽衣子とセツコのバカヤロー!!”」
俺はそう言って腹の底から声を出し、園田の顔を見てニヤリと笑った。
暗黙の了解といった感じで、奴もニヤニヤしながら頷いた。
そして、
「「かんぱーーーい!!!」」
と、園田とほぼ同時に声を張り上げて、自分の缶ビールを園田の持っている缶ビールにぶつけた。
「すぐさま他の男とヤってんじゃねえよ、なあ!」
「ねえ、それしか頭にないのかって感じですよね!」
そして二人して大声で笑いながら、缶ビールに口をつけた。