君のいない所で-16
長年の恨みつらみを一気にぶちまけた園田は、ゼーハーと肩で息をしながら、少しずついつもの平静さを取り戻していった。
「……そういうわけで、私は彼女が天に召された時になんとしても担当になって、アイツのムカつく面をひっぱたいてやるって目的のためだけに、天使になった次第です」
「……お前、マジ偉いよ。
俺なら容赦なくその女をぶっ殺してやるもん。
やっぱり園田は俺と違って理性的な男なんだなあ、さすがだよ」
園田の気迫にすっかり縮こまってしまった俺は、奴をおだてることしかできなかった。
すると、園田はフッと顔の筋肉を緩めてこちらを見た。
「……だから、境遇は違えど恋人にサッサと鞍替えされてしまった手島さんには、何か親近感のようなものを感じていました。
多分あなたと一緒にいて楽しいのは、恋人に裏切られた仲間意識みたいなものがあったからなのかな」
園田の言葉に苦笑いになる。
――いや、少なくとも俺と芽衣子の間には確かな愛はあったから、園田の一方的な愛とは全然違うだろ。
そう言って否定したかったけど、さっきの危ない園田を見てしまったから、言うに言えなかった。
それに、コイツの目には、芽衣子が俺から久留米に乗り換えたように映ってるのかもしれない。
コイツは、俺と芽衣子の間に数え切れないほどの思い出や歴史があることを知らないのだし。
ならば、ここで園田の言葉を否定しても虚しいだけだと思った俺は、
「そうかもな」
とだけ言って俯いた。