君のいない所で-11
園田は、俺がなんで謝ってきたのかわからないようで、首を傾げながらも話を続けた。
「あなた方の世界の都市伝説ってやつで、“30歳まで童貞でいたら、妖精や魔法使いになれる”って話、聞いたことありませんか?」
園田に言われて、そんな都市伝説があったことを思い出し、
「ああ、そういやそんな話聞いたことあるな」
と、ぎこちなく頷いた。
確かにその都市伝説をネタに、まだ済ませていない友達をからかったことがある。
でもそれは相手が20歳そこそこという、童貞でも笑っていられる年齢だったからおちょくることができたのだ。
でもコイツの場合は37歳の大人の男だし、とてもからかったり笑ったりする勇気など、さすがの俺でもなく、どういう反応をしていいのかわからなかった。
「あれね、だいぶ歪曲されて伝わってますが、あながち的外れってわけでもないんです。
まあ、正確には妖精や魔法使いではなく“天使になれる資格を得られる”んですがね」
そう言って園田は天使になれるための条件を話し始めた。
採用条件は30歳以上の童貞及び処女。
30歳未満だとまだ人生経験が未熟であり、考えに偏りがあったり視野が狭かったりするからだという。
そしてそれが天使という公平性のある仕事に従事する際に差し支えてしまうということで、このような年齢制限を設けているらしい。
天使になれる資格を得た者は、筆記試験、適性検査、集団面接、個人面接を経てその難関をくぐり抜けた者だけが天使になれるそうだ。
でも、慢性的な人員不足により採用年齢の引き下げや、試験内容をもう少し易しくするか検討されているらしい。
それほど天使になるための壁は高く、険しいそうだ。