17-1
バスは進む。
鉄弥と凛子は伊織達のすぐ隣に立つ位置になってしまったので、顔は伊織達から反らし気味に、且つ会話もないままバスの揺れに身を任せた。
池尻を過ぎた辺りで、鉄弥は気付いた。
凛子と手を繋いでいる。
手を引かれてバスに乗り込んだのがついさっき。
思えばバス料金を支払った時一度は手を放したのに、支払いを済ませた後、どちらからともなくまるで当たり前のように手を繋ぎ直してしまった。
どうすればいいのか。
ここで今更放すのも、おかしい。
かといって、繋いでいるのも、おかしいだろう。
でも、放したくはない。
これが本音だ。
手汗が心配で仕方がないが、それを伺う訳にもいかない。
きっと今の自分は顔が赤いはず。
しかし冷静を装って、バスに揺られる。
正直、すぐ隣の伊織達の会話すら耳に入って来ない。
本来の目的を見失うほど、鉄弥は今の状況に困惑している。
凛子がここに来て一切話し掛けて来ないのも気掛かりだ。
バスを降りたら謝ろう。
放そう。
いつ降りることになるのかも分からない中、鉄弥はこの時間が永遠に続けばいいとも思った。