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踏み入れた部屋は予想を凌ぐ広さで、内装も豪華だ。
鉄弥の涙目のお会計は、これだけである程度報われた気がする。
暫くはこの未知の世界に二人で感動していた。
バスルームを見ては感動し、広々としたベッドを見ては感動し、大きな液晶のテレビを見ては感動し、ベッドサイドに置かれたコンドームを見ては、無言になった。
改めてこの部屋の意味を知る。
凜子と、二人。
鼻血が出そうだ。
凜子も目が泳いでいて、小さくまとまってベッドの端に座っている。
「鉄弥くん....」
「はい.....」
「すごい.....ですね...」
「はい.....」
会話が続かない。
ふと鉄弥の目に、テレビ台の傍にある冷蔵庫が目に入った。
酒、つまみ、ソフトドリンク。
「凜ちゃん、何か飲む?」
「あ、じゃあオレンジジュースを....」
「.....了解」
凛子にジュースを手渡し、自分はビールを開ける。
酒の力に頼るつもりでもないが、縋れる物は多い方がいい。
次いでに煙草に火を点けた。
「鉄弥くんて、ビール好きなんだよね?」
「そうそう。よく知ってんね」
「前にね、元くんが言ってたの。鉄弥くんはビール、元くんは焼酎好きだっけ?」
「そうそう。麦好きでさ。凜ちゃんは酒は?」
「私はね、強くないんだけどビール派かなぁ」
「あ、そうなの?まだ入ってるけど、ビールにする?」
「あ........じゃあ、そうしようかな....」
二人で酒を飲んでいると、不思議と気もほぐれて会話も進んだ。
最初の緊張感もなく、笑いが絶えない。
中学時代の話から最近の話まで。
当初の目的は二人とも完全に見失っていたが、それ以上に会話に花が咲いた。