17-4
「え?これ?」
「これ、カメラ。トイカメラってやつで、おもちゃカメラとか言われたりもするんだけど」
「えっ、これカメラなの?」
「うん。写メだと音がうるさいしね。ちょっと心配だけどちゃんと撮れたはず」
「マジでデカみてーだな.....」
「へへっ...」
「......んじゃ、帰ろうか」
「....え?」
「だって写真も押さえたし、完璧でしょ?」
「でもお金.....」
「いいよいいよ、尾行の経費ってことで。勉強になったし」
「......私、こういうとこ来るの初めて....」
「や、俺もだけど....」
「せっかくだから、入ってみたい.....」
「......はぁっ!?」
言うなり凜子は、鉄弥の手からキーを取って部屋を探し出した。
キーの部屋番号と合わせて確認すると、開錠してドアを引く。
呆然とする鉄弥の方を見て、手招きしている。
少年は不安になった。
(自分初めてだし......いや、そもそも宗教か何かの勧誘かもしれないし.....いや、もしかしたら高い布団買わされるかも......いや、もしかしたら......)
「鉄弥くん!」
呼ばれて目が覚める。
しょうがない。もう、後には引けない。
額を伝う汗を拭って、少年は意を決して足を踏み出した。