17-3
「.....鉄弥くん。私達も、入ろう」
「.....へぇっ?!」
情けないことに声が裏返った。
こいつは何を言っているのだ。
「.....だって、ほんとに部屋に入るか分からないし、やるなら徹底しないと....」
「そうだけど......」
凛子は再び鉄弥の手を引いて入り込む。
鉄弥は凛子の行動力に感心する一方、片やもうどうにでもなれとも思った。
ヤケクソである。
伊織達はフロントで会計を済ませキーを受け取っている。
伊織達から顔がバレないようにしつつ、且つ凛子から動揺を悟られないように、同じように部屋を選ぶ。
フロントから「201号室」との声が聞こえた。
と言うことは、伊織達は二階だ。
鉄弥と凛子は同じ二階の空室を探す。
その時鉄弥は指が震えて、宿泊の、しかも一番高い部屋を押してしまった。
心底情けない。財布の中も情けないことになった。
顔から火が吹きそうな程だったが、しかしこの際構ってもいられない。
またも凛子を押し切って鉄弥が会計し、先にエレベーターで昇った二人を階段から急ぎ足で追った。
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伊織達が部屋に入り込む瞬間には間に合ったが、凜子は携帯をいじってはいたが写メを押さえることは出来なかった。
しかしこの目でしっかりと確認した。
腕を組み、談笑しながら部屋に入った伊織。
黒確定だ。
無音の廊下に佇む少年少女。
鉄弥は、鼓動が凜子に聞き取られていまいか不安で仕方が無かった。
「凜ちゃん、写真取れなかったね...」
「え?撮ったよ」
「は?でも写メ....」
「あ、これ」
凜子は自分の携帯に他のストラップと共に着けている小さい箱を指した。