16-5
-----------------------------------------------
結果、悩んだ末に無難にまとまった鉄弥。
古着の黒いネルシャツに、501、ジャックパーセル。
普通過ぎて自分で引いた。
女の子と二人でどこかに行くなんて、妹の真紀以外には無い。
自分の経験値不足を嘆いた。
結局、凛子が来たのは7時32分。
凛子が来る前まで煙草を吸っていたのでその2分は気にもならなかったが、遅れたことを深く詫びた凛子に対して冗談ながら嫌味で返してしまった自分に嫌気がさした。
素直じゃない。
ここで「寧ろ待ち遠しかったよ」の一言を冗談でも言えれば、自分は違ったのかなとも思う。
目的地まで隣を歩いている凛子は反省からか何時もより口数が減っていて、鉄弥は尚更気持ちが滅入った。
「あそこ。あのカフェ」
凛子が指差したカフェは、特別敷居が高いわけでもない。鉄弥でも馴染みのある店だ。
凛子調べによると、伊織が来る時間は大体8時前後。
まだ時間はある。
先にオーダーを済ませ、店の奥側、壁沿いの席で向かい合って座る。
凜子はかなり遠慮していたが、押し切る形で鉄弥が会計をした。
「鉄弥くん....ほんとごめんね、遅れちゃって。それにお金まで....」
凛子は伏し目がちに重ねて謝罪した。
律儀なものだ。
鉄弥も本格的に申し訳なく感じてきて、明るく返す。
「.....いや、気にしないでよ、うん」
もう少し気の聞いた言葉が出ないのかと、情けなくなった。
と同時に、何時もおちゃらけた感じの凛子がこんなにも真面目なものかと関心してしまった。
「ありがとう。でも、ごめん」
「いやーもうほんと、気にすんなってマジで」
「うん....」
話題を変えなければ。
調査どころではなくなってしまう。