第一部-1
平成6年。
バブルが崩壊して3,4年経過していた。
前年には北海道を代表する銀行が破綻した。
この年の中旬には日本を代表する証券会社が破綻をした。
「社員は悪くはありません」
社長が泣きながら叫んだ言葉は流行語大賞にもノミネ−トされった。
赤字国債の発行額が増えるのもこの年からだ。
現在まで続く長い不況が始まった年だ。
足立進、50歳。
髪の毛に白髪が目立つような年齢だ。
馬面な顔は、酒やけをしていて額には、深い皴が見える。
ファミリ−レストランの雇われ店長をして10年になる。
S県にきって半年が経つ。
東京の店で店長をしていた時に売り上げをごまかしたのが本部にばれ左遷をされった。
コンピュタ−が導入され店長の楽しみの一つだった売り上げをごまかすこともできなく
なった。
本部に呼ばれ課長から「クビだ、クビだ」と怒鳴られった。
この不況下では、50男に再就職先なんか無い。
肥えた女房と頭の悪い息子を養っていかなければならない。
管理課の課長席の前で何回も土下座をした。
禿げオヤジの土下座に若いOLたちは、笑いをこらえるのが大変だった。
「中卒の店長さんは、土下座が好きだからな」
30代の課長が困った顔で言う。
大卒のOLたちも爆笑だ。
同期の出世頭の赤井が間に入ってくれたので左遷ですんだ。
S県は広い県内に5つしか店舗がない。
売り上げを伸ばしても本部から褒められることはない。
もちろん赤井のように本部の管理職に出世をすることなどは、絶対ない。
何人かいる同僚の店長たちも出世をあきらめ投げやりで店舗経営をしている。
パ−トの美人おかあさんに手をだすことが仕事だ。
進の勤務する店はS県の県庁所在地にある。
駅の近くのビルの1階だ。
平日の昼間はサラリ−マンで混む。
夜もアルコ−ル類を出すようになったので売り上げも上がってきった。
土日は、百貨店に来るファミリ−層が中心だ。
平日の昼。
進は紺の背広姿でレジに立っていた。
店内のテ−ブルは、漢字の「田」の字のように配置されている。
レジに立つと店内のすべてのテ−ブルを見渡せる。
ランチは900円と高めだがテ−ブルはサラリ−マンで埋まっている。
オレンジ色の制服姿のウェ−トレスがテ−ブルにオ−ダ−を運んでいく。
タイトの制服からは、太腿が大きく毀れ、ヒップも小気味よく浮き上がる。
この制服にしてから昼間の売り上げが増えった。
進は、レジを打ちながら一人のウェ−トレスを見ていった。
浜村純子。
年齢は35歳を過ぎているはずだ。
髪型は耳が見えるぐらいのショ−トだ。
男好みの色っぽい顔立ちだ。
プロポ−ションもよく太腿丸見えのタイトが似合う。
純子をチンさんにあげるか。
チンさんは東南アジア出身の料理人だ。
和食も洋食も手際よく作る。
店にとっては、便利な人材だ。
残業代を払は、ないので怒っている。
俺のお古をチンさんにやろう。
3時を過ぎると店内はだいぶすいてくる。
進は、狭い店長室に純子を呼んだ。
後姿を見ると尻の丸みがムッチリと浮き上がっている。
制服が窮屈な様子だ。
ソファ−を進めると短いタイトから白腿が大きく露出する。
「少し尻が大きくなったのかな」
「30歳後半になって濃厚なセックスを覚えると女の体は、エロくなるからな」
進が黄色い歯をみせながらからかう。
太腿を恥かしそうに手で隠すしぐさが可愛い。
「純子ちやん、チンさんに抱かれないか。前借分を無しにしてやるよ」
純子が困った表情を浮かべる。「今は、不況だからつぎのパ−ト先を見つけるのもたいへんだぞ。旦那もまだ失業中なんだろ」
35歳をすぎて短いタイトで店に出るのも高い時給が欲しいためだ。
禿げの店長に抱かれるのも給料を前借するためだ。
「チンさん純子ちゃんに惚れいているんだよ。
純子ちゃんのケツや太腿を思い浮かべてオナニ−をしてるんだ、可哀想だろ」
純子の頭の中に、チンのいつもにやにやしている褐色の締りのない顔が浮かぶ。
ウェ−トレスたちのヒップや太腿をうれしそうに眺めている男だ。
料理を作りながらも平気で股間を触っている。
自分の白い肌があの男に抱かれるなんて想像できない。
絶対に無理だ。
進がニヤニヤしながらこちらを見っている。
店長には逆らえない、純子が泣きそうな顔でうなづく。