思ひそめてん-6
「梨乃」
後ろから悪魔の声がする。
「お前、飲みすぎ!フラフラしてるだろ」
「平気です」
「そんな歩き方してる奴がいうかね」
「一人で帰れます」
「ほら。送ってやるから」
ムッとしてレン先輩の手を思いっきり叩き落す。
「平気ですってば!ほっといてください」
「梨乃?」
「ほっといてくださいよ。お願いしますよ」
「俺といるとハルトを思い出すか?」
「・・・・」
「ハルトがまだ好きなのか?」
「違う・・・違いますよ!
レン先輩が。レン先輩が気になるんだもん」
「梨乃?」
「でも私たち、どうしようもないじゃない。
お互いにお互いがハルト先輩を思い出させる」
「・・・・」
「本当にほっといてくださいよ」
フラフラと歩き出した私は自分で思っているより
酔っているのかもしれない。
「なぁ。梨乃がそんなに酔ってるのにほっとけって言うの?」
いつか見た、泣きそうな困った顔のレン先輩がいた。
「好きな女に好きだって言えないへたれが。笑わせないでください」
ふっと笑った私の顔は最高に嫌味な顔なんだろうな。