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春眠の花
【フェチ/マニア 官能小説】

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ほ乃花-8

「罪を償う気があるんなら、警察に行くのは後まわしだ。彼女の出産に立ち会うのが先だ」

「パパ……」

 兄妹が二人して父親の後押しをする。
 そこには切っても切れない家族の絆があるのだと思った。

 身なりを正した守人は父親の顔を取り戻し、呻くように病室から出て行った。

 陽真も病室の外へ出る。

 そして私と愛紗美が服を着たあとに、彼はドアをノックして入室した。

「小村さんには何と言ってお詫びをすればいいのか。父には幻滅しました。僕が代弁して謝罪します。すみませんでした」

 彼の気持ちの良い態度に私は胸を撫で下ろした。

 訊きたいことがあるのだと、私は彼に質問してみた。

「僕のお答えできる範囲であれば伺います」

「不妊治療のアプリのことなんですけど」

「ヘラクレスのことですね」

「はい」

「あれは元々、僕の所属する学会チームがあたためていたものなのです。ですから今回、父があなたに使用したアプリは、父が勝手に書き換えた偽物なわけです。これも重ねてお詫びします」

「それで、私の体は今どんな状態にあるのでしょうか?」

「父の使用したアプリはおそらく、催眠だとか洗脳の類いのものかと思われます。後遺症はしばらく残りますが、私生活に支障はない程度だと思っていただいてかまいません。つまり、今まで通りの素敵な奈保子さんのままだということを、僕が保障します」

「それはどうも」

 彼のやさしさに触れて、私はほんのり赤面した。

「お兄ちゃん、ひょっとして奈保子さんが好きなんだ?」

 妹のほうが口を挟んでくる。

「素敵な人だとは思うけど、既婚者だしな」

 兄のほうは私に好印象を抱いているらしい。

 さらに彼は、いずみ記念病院のロゴマークについても語った。

 四つ葉のクローバーに秘められた意味。
 父親、母親、長男、長女、この四人が集って医療の未来をクリーンにする、そういう思いがそこには込められているらしい。

 両親が離婚して母親とは離れ離れにはなったが、看護師の佐倉麻衣のお腹には新しい命が宿っていて、賑やかな家庭がもうすぐ戻ってくるということだった。


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