ほ乃花-7
泉水守人は自分の娘をベッドへ運ぶと、振り返りざまに目を剥いて、無防備な私を正面から犯しにきた。
「いやっ」
荒れ狂うペニスが膣内のヒダを絡め取って出入りしている。
女がいちばん感じる部分も彼はよく知っているようだった。
卑怯な行為ではあるけれど、彼の肉体と離れたくないと思う自分がいた。
脳がくらくらと揺れて、心も揺れている。
ただ怯えるだけの愛紗美は、潤んだ目で私たちの行為を見守っている。
あなたにも、ごめんなさい──。
快楽のさ中で私は愛紗美に謝罪した。
するとそこへ、開けっ放しの病室のドアの向こうから人がやって来て、スマートな動きでこう言う。
「やっぱりここにいたのか、親父」
いずみ記念病院の医師であり、泉水守人の息子、泉水陽真その人だった。
守人はとっさに私のことを突き放し、この有り様を、なんでもない、などと言った。
しかし陽真は父親に詰め寄る。
「医師免許もないくせに、親父はまだこんなことをしているのか」
医師の免許がない、とは聞き捨てならない台詞だった。
陽真はさらにつづける。
「想定外の医療ミスだったかもしれないけどさ、それが原因で医学界から追放されたからって、どうしてホームレスなんかしてるんだ。俺の親父がそんなんじゃ困るんだよ」
やるせない思いが守人の表情に滲み出ていた。もう私をレイプする気力も失せたようだった。
そこで私はわかった。夢の中の泉水守人がホームレスの姿をしていたわけを。
「愛紗美にまでこんなことをしておいて、恥ずかしくないのか」
「もういいよ、お兄ちゃん。あたしなら大丈夫だから」
「愛紗美に謝れよ」
「いいってば」
兄と妹と父、それぞれが言い終えたあと、守人がふたたび口を開いてつぶやく。
「すまない、愛紗美……」
許したいけど許せない部分がある。そんな複雑な表情の愛紗美だった。
「すみません、見るつもりはなかったんです」
そう言って陽真氏は全裸の私にシーツをかけてくれた。
私が礼を述べると、彼のモバイルフォンに着信があった。
「……はい、……泉水、……ええ、……そうですか、……わかりました」
陽真は真剣な目をさらに引き締めて、父親にこう告げた。
「佐倉麻衣さんの陣痛がはじまったみたいだ。言っておくけど、正真正銘、親父の子どもだからな」
まさか、と守人はその可能性を思い起こしているようだった。