ほ乃花-4
私の体に変化があらわれた。
じゅわっと唾液が溢れて、熱い汗を感じ、涙腺から感情が滲む。
そして膣から子宮へ向かう生理の流れは、オーガズムそのものだと実感する。
バイブレーター自体の振動や回転だけじゃない、目に見えない何かが作用しているのかもしれない。
「あ……あ……うっ」
気をゆるめると私はすぐに絶頂した。
力無くへたり込む私の中で、異物はなおも乱暴な能力を発揮している。
「一度絶頂したぐらいで満足する体ではないでしょう?」
「はい、先生……」
彼の両腕に抱擁されながら立ち上がると、バイブレーターが抜け落ちないように彼が押さえ、そのまま窓際まで連れて行かれる。
「この病院からの眺めは最高ですよ」
彼の肉声が耳元で聞こえて、次にはカーテンが全開にされていた。
外の景色がよく見える。ということは、外からもこちらが見えているということだろう。
この病室は上層階にあるようだけど、全裸の男女が絡み合う様子は、特定の場所からならば肉眼でも確認できるはずだった。
二人、向かい合わせで窓辺に立って、彼が乳首にしゃぶりついてくると、私の背中が窓ガラスに張り付いた。
「やっ、先生、こんなところで、誰かに見られたら、あん、ふっ……」
「いいじゃないですか。このほうがお互い興奮できて、完全燃焼できるのだから」
はげしいキスを交わして、私の脚が吊り上がると、彼はバイブレーターをぐんぐんと出し入れさせてきた。
愛液が匂いだして、私は潮を吹いた。
窓の外からも視線で犯されているような気分だった。
「相手がこんなに感じているのなら、私のこの行為は罪に問われると思いますか?」
泉水守人はそう言って、私の応えを待った。
「いっ、いいえ、あんもう、だめっ、イク、先生、イクう、んくう……」
「どこがどうイクのか、ちゃんと教えて欲しいですね」
下から突き上げてくる快感に、子宮がわなないている。
「あっ、あそこ、クリトリス、あんイクっ……」
「ごまかしはいけませんよ」
「はあ、あう、ゆるして、おま、ん、こ、あっ、イっちゃうっ……」
「奈保子さんのようなちゃんとした女性が言うと、余計に色っぽく聞こえる。言わせたこっちが照れてしまうよ、まったく」
脂ぎった顔面を私の胸にうずめて、片手で背中を引き寄せる。
もう片手でバイブレーターを握りしめて、物理的な快感で私をいじる。
ずっと終わらない、二度と引き返せない、一度目を上まわるアクメが、失恋に似た未練と切なさを植えつけてくる。
「安全日や危険日なんてものは存在しない。今日という日が君と私の記念日になるのだよ、奈保子さん」
彼の態度が微妙に変わった。
局部から玩具を引き抜いて、それを無造作に投げ捨てる。さらに私を床に這わせる。