ほ乃花-3
私はおそらく洗脳されているのだと思う。なぜなら、その自覚症状があるからだ。
どんな要求も拒めないように、例のアプリケーションで洗脳されたに違いない。
その証拠が私の体にあらわれている。
女が女であることを自覚する瞬間は、男に抱かれて愛をささやかれているときに他ならない。
私は今、それを体感している。
カップをずらされたそこに乳首があらわれ、ショーツの生地ごと指で膣内に挿入される。
「あんだ、だめっ、ああっ……」
指はさらに奥へ、ショーツをなすりつけながら入ってくる。
「奈保子さん、君はとても素敵な女性だ。患者をこんなに愛しく思ったことはない」
甘い言葉でささやく。その口が私の乳首をかじり、舌がくるくるまわる。
私のことを全裸にすると、肌の上から下までを丁寧に舐めてきた。
全身へのクンニリングスだった。ぷつぷつと鳥肌が立ってしまう。
「ああん……あっああん……」
「そんなに喘がれると、もっと意地悪してあげたくなるよ」
彼もおなじく全裸になったとき、信じられないものがそこに存在していた。
彼は四十歳を越えているはずだと思う。いいや、五十歳にも達しそうな体だった。
それなのに、服の上からでは測れなかった若々しい肉体と、年齢に比例しないペニスが、彼をより凛々しく見せていた。
二人してベッドから下りると、これを口にくわえろと言わんばかりに彼の腰がきて、私はひざまづく。
しばらく眺めたあと、それを口に運んだ。
フェラチオから伝わってくるのは、彼の体温と、異臭と、体液の味。
よだれが顎から首すじをくびれながらつたう。
陰嚢まで生い茂った体毛を見つめ、男を満足させる行為をつづける。
「素人とは思えない仕事ぶりだ。君はこれを使いなさい」
性の衰えを感じさせない医師は、私に道具を手渡す。
見たこともないほど大きなバイブレーターだった。
「アプリでの遠隔操作が可能なタイプだ。さあ、遠慮はいらない」
促されるまま私はうなずいて、とっくにできあがっている女性器にあてがう。
「あんく、ううん、んっ……」
バイブレーターの先端を感じるのと同時に、甘い刺激が脳内に分泌された。
さらさらした愛液のあとから、ぬるぬるした愛液が溢れて、膣が異物を呑み込んでいく。
かくん、と腰が落ちて、直後には体を引き裂かれるような悦楽におそわれた。
「君はそんなふうに、いつも一人でしているわけだね?」
「いいえ、あっん、ちがい、ます、うっ……」
「セックスも好きだが、オナニーも好きなのか」
「知りません、あん、ああっ……」
「私の理想に適った女性が、自分の意思でオナニーをしてくれている。産婦人科の医師をやっていて、ほんとうによかった」
彼はスマートフォンのような端末を取り出すと、ひらめいた顔で画面を操作する。