に乃花-10
「触診しますから、少し我慢していてください」
何をどう我慢すればいいのか私にはわからない。
ウエストのあたりをカーテンで仕切って、医師と看護師が私の下半身側へまわり込む。
醜く割れた女性器はもう彼の目の前で、左右にめくられるのをじっと待っている。
嫌な汗が背中に浮いてきたとき、冷たい感触が陰唇の内側にやさしくタッチした。
「……っ」
へそに力が入り、お尻の穴がきゅんと締まる。
声だけはぎりぎり止められたけれど、腰は明らかに浮き上がっていた。
「少しずつ入ります……、力まないで……、いいですよ……、あと半分……、ゆっくり……、入りましたよ」
泉水医師が私に挿入した物が何なのか、ここからでは確認できない。
そうとう大きな器具であることは実感できている。
ビューラーのお化けみたいな、あの器具だろうか。
とても切ないのに、くすぐったい余裕もある。
「開口します」
潤滑ゼリーのおかげで、膣が左右にひらいていくあいだにも、ストレスはほとんど感じない。
股間の皮膚が突っ張る感じはあるので、女性器の奥は確実に彼の視線を浴びている。
頬が熱くなって、あそこも火照ってくる。
牡丹の紅(あか)、椿の朱(あか)、薔薇の赤(あか)。
どの赤よりも赤く、自分を偽れない色。
そこに触れればすべてが露わにされてしまう。
体調や病状どころか、深層心理まで読み取れてしまうほどに、素直な反応をあらわす女性器。
彼の指先には目がある、まるでそんな指使いで膣内の至るところをいじくる。
男対女の、診察の一線を越えた異常な関係を妄想せずにはいられない。
そこへ医師が問いかけてくる。
「ここはどうでしょう、痛くないですか?」
「だ、大丈夫です……」
気持ちいいです、先生──。
「このあたりは、いかがですか?」
「とくになにも……」
すごく濡れてきています、先生──。
「指で押されている感じがわかりますよね?」
「はい……」
そんなふうにされたら私、おかしくなっちゃいます、先生──。
今にも本音がこぼれそうな私の唇。
淫らな不発弾を抱えたまま、私はこの触診に欲情していた。