は乃花-9
すするような呼吸をしながらまわりを窺うと、彼らの手にはスポイトと試験管が備わっていた。
一つは涙を、一つは唾液を、一つは汗を、そして膣から分泌された豊かな体液を、一滴残らず吸い取っていく。
「小村さん、母乳が出ていますよ」
佐倉麻衣の言う通りの部分を見ると、そこには乳白色の液が滲んでいた。
これもまた例のアプリケーションの産物なのだろうか。
「僕がチェックしてみましょう」
泉水医師は私に寄り添って、マスクをずらすと、母乳に口づけた。
「きゃん」
この人、こんな顔してたんだ──。
曲がった性癖の持ち主だと思っていた彼の素顔に、私は好感を抱いていた。
しかもこんな距離で体を抱かれ、乳首を吸われている。
紳士的な手つきが、私の陰部をまさぐってくる。
「少しだけ、中を調べますよ」
彼の指が、太い指が、私の体内に入ってくる。
「あっ、あう、うふう……」
関節を曲げ、指先がうねり、粘膜をやさしく触診していく。
「ああ指が……あん……私……私……」
「中の状態は正常です。感度もいいし、体液の分泌量もじゅうぶんあります」
丁寧な口調と、丁寧な愛撫。それだけで気が遠くなる。
「実際の出産のときは、ほんとうに大変ですから、今のうちに性器をほぐしておきましょう」
言うなり彼の指が二本に増えて、やがて三本になり、膣の内と外とを行ったり来たりする。
「ああ、せんせ、あん、いい、きもち、いい、です……」
「もっと欲しいですか?」
上気した声でうなずく私。
「欲しいだけ入れてあげますからね」
「はっはん、あん、ああください……」
私の変化に気づいた医師は、花の入り口を目視して、そこへ四本目の指を挿入してきた。
「あっ」
はちきれんばかりに広がる、女の花道。
彼の親指以外の指の一つ一つが、それぞれ別な動きで私を翻弄する。
手首をぐるりと返せば手刀は水平に、半回転させれば垂直に、女性器のかたちをたやすく歪めてしまう。
治療として省けない行為なのだろう。私はただ受け入れる。
彼は手刀を抜いた。そしてその手をこちらに見せる。
「自分でご覧になってみて、いかがですか?」
医師の手はどろどろだった。
たっぷりのローションに手を浸したのかと思うほど、糸を引いた指のあいだも、手のひらも、私のせいで赤くふやけている。