は乃花-6
足裏には不快な汗が滲み、じめじめとストッキングを湿らせる。
リンパの流れどころか、快感の流れが体中の脂肪を溶かしているみたいだった。
「そろそろ、君も頼む」
若い医師の言葉に、男性スタッフが動いた。
こちらも泉水医師に負けないくらい若くて、アスリートのような体つきをしている。
彼は自分の両手に透明なゼリーをたっぷり取って、
「下着を脱いでください」
と私に告げる。
口調はおだやかにして、じつは絶対命令ほどの圧力を秘めていることに私は気づいた。
彼におなじ台詞を二度言わせるのは危険すぎる。
私は素直にホックを解き、ストラップを下ろして、性別のあかしを彼らの前にさらした。
支えをなくした乳房に重力を感じる。
彼らはすでに何人もの女体を見てきているはずだから、きっと私の体型をほかの人と比べるだろう。
大きすぎないか、小さすぎないか、形はくずれていないか、色に異常はないか。
自分の胸にだんだん自信をなくして、私はとうとう目をつむってしまう。
こうすれば彼らの表情を見なくて済む。
もっと早くからこうしておけばよかった。
視覚以外の感覚だけを頼りに、彼らの行動を先読みしようとするけれど、これには無理があった。
アルコールや薬品の匂い、誰かの息づかい、衣服のこすれ合う音、そして自分の心臓の音。
見えていたものが見えなくなると、眠っていた才能が目覚めるように、もう一人の自分が意識の奥で生まれるのがわかった。
「はあう、うう……」
お腹に何かが触れて、思わず声を漏らしてしまう。
にゅるにゅると肌に吸いつく手の動きはとても刺激的で、私の体をあっという間に火照らせる。
「あん、いやっ、だっ……」
乳房を揉まれた。
その手はだんだん敏感な部分へとマッサージの範囲を広げていく。
「あの、そこは、ちょ、ちょっと、ああっ、うっ……」
両方の乳首を撫でられて、情けないほど感じてしまう私。
理性がしょんぼりと萎えていく。
同時進行で、下半身でも新たな動きがあった。
タイトなスカートをまくり上げるなり、ストッキングを足首まで下ろされて、ショーツだけはだめだと思った私は目を開けた。