ろ乃花-8
少々荒っぽい乗り心地にも慣れてきた頃、タクシーはハザードランプを点滅させながら、マンションの敷地内で停車した。
カウンターが遠慮のない料金を示している。
今月は美容室をあきらめるしかなさそうだなと思った。
さっき会ったばかりの女子高生を自宅に入れることになるとは、思ってもみなかった。
彼女にしてもそれは同感だろう。
私は彼女の警戒心を背中に感じつつ、年上の振る舞いで部屋へ招き入れた。
「おじゃまします」
忍び足をする彼女を姿見してみて、やっぱり歳は取りたくないなと今さら思う。
私なんかじゃ到底適わない初々しさがそこにあったからだ。
可愛い妹ができたような気分になって、ついつい甘やかしてあげたくなる。
「そっちがトイレで、バスルームはそのドアの向こうだから、好きに使って」
あとは下着だ。
確かこのあいだ買ったばかりのショーツがあったはずだし、未成年にはまだ似合わないけど、まあいいか──。
私は小さなビニールバッグから白いシルク生地を取り出して、
「安くないんだからね」
と彼女にあずけた。
「すごおい。風俗のお姉さんが穿いてそうな感じがする」
「愛紗美ちゃん、ノーパンで帰ってみる?」
女子高生を相手に私が大人げないことを言ったもんだから、彼女はあどけない笑顔ではつらつと笑い、ショーツ片手に脱衣場へ消えた。
そのあいだに、私は職場へ電話をかけて遅刻の理由を繕ったり、お茶菓子を準備したりと、なかなかのお姉さん振りを客観的に評価していた。
そこへ彼女があらわれた。
「奈保子さんて、こんな下着ばっかり穿いてるの?」
「そうだけど、どうして?」
「なんとなく穿き心地がエッチだなあと思って。ていうか、大人はみんなエッチだよね。男の人も女の人も」
「そうかもね。私もエッチは嫌いじゃないし」
どうしてこんな話になるかなあ──。
「ねえ、訊いていい?」
素朴な表情で彼女が言う。
ここには姫と姫しかいないわけだし、遠慮なくしゃべらせてあげた。