ろ乃花-4
恐くて身を縮めるしか方法がないから、あの子はあんなに赤面しているのだろう。
まったく、一人の女子高生を集団で──。
車内アナウンスが迷惑行為の禁止を促す中で、彼女は完全にうつむいてしまった。
やがて駅に到着した電車は何人か下車させたが、また何人かが乗車したために、私は彼女のそばへ行くこともできなかった。
女子高生との位置関係は変わらない。
ただ、彼女の全身を見られる並びにはなった。
みじかいスカートのプリーツは少し乱れて、スクールタイツを穿いた細い脚を内股気味にすり合わせている。
次に私が見たものは、予想していた通りの卑劣な光景だった。
誰かの手が彼女のお尻を撫でている。
別の手は太ももに伸びている。
それらを必死で振り払おうとする彼女の手は弱々しく、おそらく恐怖にかじかんでいた。
涙をこらえる姿が痛々しい。
私は勇気を振り絞って、彼女のいる方向へ身を乗り出した。
「やめておいたほうがいいですよ」
すぐそばで声がした。
どきっとした私は、心臓が正常な動きをしているのを確認すると、ほぼ目だけを後ろへ向けた。
「あの銘柄は初心者にはリスクが高すぎますって、……ええ、……昨日の今日ですから」
携帯電話を片手に株の話でもしているのか、商社マン風の堅い身なりをした若い男性がいた。
彼は私の視線に居心地を悪くして、
「すみません」
口だけを動かして苦笑いした。
どうせならマナーも携帯してもらいたいものだ。
そうやって別のところに気を逸らされているうちに、私はあの女子高生を一瞬だけ見失った。
目で探すと、彼女はおなじ場所にいた。
しかしなんということだろうか、ブレザーを汚す不潔な手までもがあらわれて、目を離した一瞬の隙に事態は急変していた。
彼女の体型よりも不自然にふくらんだ胸のあたりでは、上着の下から潜り込む手のうごめきが想像できる。
多感な時期の複雑な気持ちをもてあそぶように、少女趣味な無数の手が彼女を辱めている。
さらにスカートのチェック柄までもが清潔感をなくして、その奥をまさぐる腕とじゃれ合っている。
嘘でしょう──。
すべての成り行きを見て、私は戸惑った。