い乃花-14
「マテリアル──」
「くむっ、うん……」
器具の先端部分から液体が射出されて、膣内に怪しい潤いがひろがる。
「サージカルヒット──」
「ああん、だめ、そこだめ、いいっ、ああ、うそっ、んん……」
醜くほぐれた内膜に新たな動きが加わり、その回転の切り替えの速さに腰が暴れそうになる。
いびつな音が自分から聞こえる。
妊婦としてここへ運ばれてきたときとはまるで正反対の自分が、分娩台の上で贅沢な接待を受ける魔の時間がつづいた。
シスターがそうするように、私は胸の前で十字を切ったつもりで祈りを捧げ、甘い洗礼に身悶える巡礼者の気分でいた。
イっちゃう、体がどこかにイっちゃう──。
絶頂感がむらむらとせり上がってきたとき、泉水医師の操る機器が不吉な電子アラームを発した。
故障ではなさそうだけど、耳障りな音だった。
私は快楽の真っただ中で喘いで、細い金切り声をあげる。
頭の隅で鳴りつづけるアラームが内耳(ないじ)を不快にさせた瞬間、快楽物質のミストが体中に吹き荒れた。
瞼は下がり、薬品の匂いが鼻をつく。
昇りきったのか堕ちていったのかも自覚できない。
電子アラームだけがおなじ音を刻んでいた。
興奮した心音がとくとくと脈打って、オーガズムの後味をやさしく包み込んでくれる。
しかしアラームは止まない。
音の出どころはどこだろうと耳を澄ませる。
私は瞼を上げるのと同時に寝返りをうって、目に映ったその光景に戸惑いをおぼえた。