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美白仙とヤン・ユウホワン
【歴史物 官能小説】

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ヤン・ユウホワン-1

美白仙に仕事を依頼する者は殆ど富貴な身分であり、白家一族の財産はどんどん潤って行った。

やがて数年が経過し、美白仙も18才の若者になった。

そんな折に供を連れずに1人の娘がやって来た。

玉環(ユウホワン)15才である。

冠から薄絹を垂らし顔を見せぬようにしたその娘は美白仙を見て言った。

「あなたが世にも不思議な秘儀を行う美白仙さんですか?

私の体を変えて頂けるというのは本当ですか」

僅か15才にも拘わらず艶のある声に美白仙はどきりとした。

そして体から芳しい香りがするのを不思議に思った。

香油をつけた匂いとも違う。肌の奥からにじみ出てくるような香りである。

「どうぞこちらへ」

美白仙が案内する為に手を差し伸べると、玉環は片手を預けた。

驚くべきことにその手に触れたとき、美白仙はその少女の虜になった。

白魚のような手は骨がないかのごとく柔らかで、少女の女体の柔らかさを感じさせた。

実際少女の身のこなしはそよ風に揺れる草花のようにたおやかで上品なものだった。

美白仙はそれまでに多くの尊い身分の女人と接して来たが、このように優雅な体のこなしをする者に会ったことはなかった。

「さて、供の者も連れず一人でここに来た訳は? 玉環どの」

客室の寝間に案内すると美白仙は訪問の目的を確かめた。

「私の肌を雪のように白く変えてくださいませ、美白仙さん」

「その為には全身の隅々にまで術を施さねばなりません。

そのようなことは僕にもしたことがありません。

ところで施術のために必要な金銀はお持ちですか?

きっと驚くほどの費用がかかりますよ」

玉環は薄絹の奥でにっこりと笑って言った。

「お礼に私が舞をお見せするというのはいかがですか?」

「たとえ10日間眠らずに舞い続けたとしても、かなりの額が足りないことでしょう」

美白仙には喉まで出かかった言葉がある。

それはあなたと臥所を共にできたなら、なんの報酬もいらないのだと。

だが少女はこう言った。

「今の私には親もなく、金銀も宝石もありません。

そして叔父の家で世話になっている身です。

けれど将来もし尊い方の目に止まり富貴の身になることができたなら、必ずこのときのお礼を差し上げます。

この私の約束だけではいけないでしょうか」

そして少女は一遍の歌を歌った。その意味は次のようだった。

空に雲一つなく、風が遮られることなく吹き抜けるように、私の言葉に濁りはない。

川が常に流れて澄み切った水を湛えるように、私の約束に偽りはない。

あなたは鳥のように私の言葉を信じて飛ぶが良い。

あなたは魚のように私の約束を疑わず泳ぎ続けるが良い。

美白仙はその歌をじっと聞き惚れた。

その声は蒼い空のように澄み切っていて、流れる水のように流麗であった。

「宜しい。玉環どの。僕はその言葉を信じて秘儀を行いましょう。

但しその秘儀とは僕の舌で玉環どのの全身を舐めることなのです。」

顔を薄紅色に染めて玉環はゆっくりと頷いた。

「構いません。あなたが私の言葉を信じてくれたのと同じく私は既にあなたを信じて身を任せる積りですから」

美白仙の秘儀は何日も続いた。

皮膚を白くする技は乳首や恥部の黒ずみを取ることよりもかなり難しい。

一歩間違えれば色を抜きすぎて白い斑模様になる。

美白仙は最初は足裏や脇の下などの目立たぬ場所から始めた。

舐められている間は他にすることもなく、玉環は少しずつ身の上を語り始めた。

幼くして両親を失った玉環は叔父に引き取られたが、扱いは使用人並だった。

ある日山に登って焚き木を集めていると大きな熊が現れた。

その熊は1人の老人を担いで運んでいるところだった。

玉環は咄嗟に高い声で歌を歌い始めた。熊は驚いて老人を放って逃げて行った。

老人はまだ息があり、なんとか歩くことができたので炭焼き小屋まで連れて行って食べ物を運ぶなど介抱した。

老人は張(チャン)という山野に住まう隠者だったが、酒を飲んで油断しているところを熊に襲われたらしい。

幸い大きな怪我はなく、玉環は安心して張と別れようとした。

すると張は玉環にお礼をすると言って、不思議な技をかけた。

それは大周天という秘儀で体の体質を根本から変える技だという。

すると玉環の全身に気が巡って体が火照り芳しい香りに満ちたという。

それ以来玉環の体は常に香りに満ちて、体も柔らかくなった。

数ヶ月して張老人は身なりを整え叔父の家に現れた。

そして玉環の姿を見ると、初めて見る者のように扱い、こう言った。

「この娘は将来王侯貴族に見初められ栄華の極みに上り詰めることだろう。

そのときの為に歌舞・音楽を習わせ、教養を積ませると良い。

さすれば王妃に匹敵する身分にまで登り、一族に繁栄をもたらすであろう」

それを聞いて叔父は慌てて玉環を大事にし始めた。


玉環は張老人が自分の為に芝居をうったのだと悟り、以前に会っていたことを口にしなかった。

また張老人は玉環を密かに呼んでこう伝えた。

「この蜀の国に白家という一族がおり、その家長の美白仙という者は女人の肌の色を雪のように白くすることができるという。

もしお前がその秘儀を受けることができたなら、わしの予言は本物になるだろう」

張老人はそう言って山野の彼方に去って行ったという。

 


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