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美白仙とヤン・ユウホワン
【歴史物 官能小説】

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ヤン・ユウホワン-2

「それ以来私は叔父の命令で歌舞・音曲を習い詩を学んだのです。

それまで厄介者だった私が一族を繁栄に導く救世主扱いを受けることになったのです。

でもあくまでそれは叔父の打算であって、愛情ではないのです」

そう言うと玉環は薄絹の奥で寂しそうに笑った。

秘儀はまだ半ばだったが全裸の玉環は顔だけは隠して見せようとしなかった。

「私の言葉に偽りはないけれど、この世に絶対ということがないように、私があなたとの約束を守れない時が来るかもしれません。

ですからせめて今この場で私の舞をお見せして先にお詫びをしておきます」

そういうと絹衣を身につけ白家の音曲師に頼んで琴を演奏させた。

琴の音に合わせて玉環は歌いながら軽やかに舞った。

その歌の意味は次の通りである。


誓ったときには空が青くどこまでも澄み渡っていた。

まさか嵐が来て、鳥が翼を傷めるとは夢にも思わなかった。

契ったときには水面は清らかで川底の砂利まで見通せた。

まさか雨で泥が流れ魚が向かう先を見失うとは知るよしもなかった。

この気持ちに偽りはないけれど、約束を破った時の為にせめて詫びよう。

私はあなたの為に風になり花になり波になり鳥になろう。

私はあなたの為に星になり雪になり森になり魚になろう。

そしてこの舞を楽しんで、あなたはこの私を許しておくれ。


舞い終わると玉環は、美白仙の前に膝まずき頭を下げた。

「張お爺さんの言葉を信じてあなたのところに来ました。

決して騙す積もりではありません。

どうか最後まで秘儀を続けて頂けないでしょうか?」

美白仙は思った。張老人は玉環を信じ、玉環は張老人の言葉を信じてここにやって来た。

そして自分は玉環を信じて報酬を受けずに秘儀を行っている。

信じることの絆がこれからも繋がって行くことを信じて続けるしかないと。

やがて美白仙は玉環の乳房を舐めることにした。

玉環は甘い声を漏らして耐えた。その声に美白仙は魅了された。

まるで鳥の囀りのようでもあり、花の蜜の滴る音のようでもあった。

そして陰部を舐めたときには、玉環は何度も体をくねらせて絶頂に上り詰めた。

美白仙はこの仕事に慣れていたにも拘らず、その様子に欲情し勃起した。

けれども勿論仕事なので、玉環に手を出すことはしなかった。

その日の秘儀が終わり、明日は顔を残すだけとなったが、美白仙は玉環に対する恋の病に身悶えた。

玉環の心根もさることながら、舞の美しさ歌の素晴らしさ、そして女体の魅惑は美白仙の胸を締め付けた。

(嗚呼、せめて玉環の体と交わって共に喜びの声を上げられるものなら、もうなんにもいらない)

その夜は何度も玉環と交わる妄想をし悶え苦しみ、一睡もできなかった。

いよいよ秘儀の最後の日となったとき、玉環は顔を覆っていた薄絹を取った。

そして美白仙は玉環が最後の最後までその薄絹を取らなかった理由が分かった。

その眉は柳の葉のように美しい線で、目は日月のように輝き、鼻は優雅な丘陵のよう。

紅い唇は朝露に濡れた花びらのようだった。

賢く美しく、それだけでなく男心をどこまでも魅了する、多くの美女を見て来た美白仙も初めて目にする美形の顔立ちだった。

美白仙の玉環に対する恋心はここで完全に囚われた。

目を閉じた玉環の顔を美白仙は舐めて白く変えて行ったが、その顔がさらに輝いて行くのを彼は驚きの思いで見つめていた。

玉環の皮膚はどの場所も芳しかったが、同時に舐めると甘い味がした。

そして全て舐め終わったとき、思わず美白仙は自分を抑えきれず玉環を抱きしめた。

「あっ、美白仙さん、何をなさいます」

「玉環どの、許しておくれ。僕はもう自分を抑えることができない。

仕事が終わった今、張り詰めた気が解けて、もうあなたを抱くことしか頭にない。

もうなんにもいらないから私に情けを分けてくれ」

「そうだったのですか。

私は顔の薄絹を取れば男心を惑わすと言われ、今日まで取りませんでしたが、それも無駄になりました。

今、私があなたと体を交えれば、私がした約束は果たせなくなります。

叔父や一族から受けた恩も返すことができなくなり、王侯貴族の寵愛を受けて栄華の極みに上り詰めあなたに富と財宝を送る夢も潰えてしまいます。

けれども、もともとあなたに任せた私の体。

そんなに私を欲しいのならあなたには自分の物にする資格があります。

私は今のままでは金銀も宝石も持たぬただの小娘ですから」

その言葉に美白仙は目が覚めた。

「そうだった。今そなたを抱けばただの貧しい娘で終わる。

しかも約束を守ることもできない不実な人間として自らを貶めることになる。

そんなことはさせられない。さあ、行くが良い。

私はこの後女人を抱いて溜まった精を吐き出そう」

そうやって別れた2人はその後二度と会うことはなかった。

しかし間もなく美白仙は玉環が皇帝の息子に嫁いだことを風の頼りに知ることになる。

そしてまた、驚くべきことにいつの間にか皇帝の妃になって大出世し寵愛を一身に受けたことを知る。

その頃から白家には贈り主の分からぬ金銀や宝石が届けられるようになったという。

玉環は楊家の出であり、後に貴妃の位を授けられ、楊貴妃と呼ばれた。

美白仙はその後多くの女人に秘儀を行ったが、二度と玉環に抱いたような邪念は持たなかったという。

しかしこの話はあくまでも人の口に上った伝聞で真偽の程は定かではない。



   


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