辺境の姫君-1
最初の仕事は辺境の豊かな部族からの依頼だった。
輿に乗せられやって来たのは齢14になる美しい姫だった。
父親の部族の長が言った。
「都の宮殿に娘を差し出すように言われたが、1つ問題がある。
容貌には都の女にひけをとるものではないが……乙女の印がないのだ」
その後、乳母らしき女人が美白仙に耳打ちをした。
「姫は幼き頃から部族のたしなみとして乗馬をしておりました。
その為、封が自然に破けて乙女の印を失ってしまったのです」
美白仙は笑った。
「その程度のことなら、私どもに相談せずとも幾らでも方法があるはずですが」
すると乳母は一段と声を潜めて美白仙になにやら耳打ちした。
すると美白仙は大きく頷いた。
「そうですね。それこそ我ら白家だけが為しうる技です。お任せあれ。
一晩……いや、2晩あれば、十分でしょう」
美白仙は1晩だけで終わる自信があったが、初めての仕事なので2晩を約束した。
姫は客室に特別に泊まり、夜遅く美白仙が閨に訪れた。
姫は年の近い美白仙を見て絹衣の襟を手で覆った。
「姫君、僕が美白仙だ。確かめたいことがあるので、服を脱いでもらいたい」
姫は必死に首を振って、寝床の上を壁側に退く。
「近寄るな。無礼者。吾は都の宮殿に召される者ぞ。
指一本触れても、反逆の罪で首が飛ぶのを知ってのことか」
美白仙はにこやかに笑った。
「お父上からも乳母からも何も聞いておらぬのか?
姫君がここに来たのは僕の技を体に受けて、後宮の女人として認められるようにするため。
後宮入りするには、男を知らぬ体でなければならないのだ」
「無礼者。吾はそのようなふしだらな娘ではない」
「姫君がそうであっても、体の印を見て宦官たちが判断し追い返すことになるのだ。
そうすれば姫君にとっても部族にとってもこれほど不名誉なことはないのだ」
「な……何ゆえに」
「それを教えてあげよう。僕に姫君の胸を見せなさい」
「おのれ。見せてやろうとも。吾が汚れなき体だということを知るが良い」
部族の美しい姫は怒りに顔を蒼白にして絹衣の胸元を開いて見せた。
白い乳房が零れ落ち、美白仙はその眩しさに思わず目を細めた。
だが、次の瞬間彼は姫の乳房に指をさした。
「なるほど皮膚のきめ細かく毛穴は閉じて肉付きから見てもまだ男を知らぬ体に違いない。
だが、それを後宮の宦官は認めるとは思えない。
その乳首と乳輪を見れば経産婦と判断するに違いない。
肌が白い分余計にそこが黒ずんで見える。
既に乙女ではないと疑われやすい体であることは確かだ」
「そ……そんな。この色が濃いのは吾の部族の特徴で、疑われるいわれがない」
「では、それを後宮の宦官に言うが良い。信じてもらえるなら」
姫は言葉が詰まってしばらく美白仙を睨んでいた。が、やがて口を開いた。
「ではお前なら何ができるというのだ。ここに紅でも塗るとでも言うのか?」
美白仙はそのとき墨のような真っ黒な舌を出した。
「な……なんだ。その黒い舌は? 気味が悪いぞ」
「僕は美白仙。生まれた時から黒い舌を持っている。
この舌で乳を吸ったため、母の乳首には色がない。
僕の舌が舐めれば人の肌の色は抜けて行くのだ。
姫君の乳首と乳輪をこれから舐めて、色を程よく抜きます。
そうすれば薄紅色になり宦官の検問は通過するでしょう」
美白仙は寝床に近づいた。姫は再び後ずさりする。
「ま……待て、美白仙。 吾はそのようなことをさせたことはない」
「後宮に入ってお目にかなえばそれ以上のことが待ってます。姫君、失礼」
美白仙は姫の片乳に顔を近づけると乳首を口に含んだ。
「あっうっ……何をする」
姫は美白仙の額に両手を当てて、自分の乳から引き剥がそうとした。
その手首を掴まえて壁に押し付けると、美白仙はなおも乳首を吸い続ける。
「やめよ。やめよ。吾の体を汚す気か。父上に言いつけるぞ。ああ……」
途中で抵抗しなくなった姫の手を離すと美白仙はしばらくしゃぶった乳首から顔を上げた。
「姫君、ご覧の通り色が抜けました」
そう言われて姫が自分の胸を見ると、左の乳首と乳輪が黒ずんだ褐色から薄紅色に変っていた。
これは美白仙の特別な体質によってのみ、為せる技なのだ。
現代の科学でも説明がつかない秘儀になるが、なんらかの特殊体質が人体の皮膚に含まれるメラニン色素を溶かして吸収する働きを持つらしい。
「姫君、もしこれで僕がやめたらどうなるとお思いか?
乳房の先が色違いの姫君だと宦官たちに怪しまれることでしょう」
「おのれ。吾を愚弄する気か。よくも辱めたな」
「そんな積りはありません。
姫君、もう片方の乳首も同じ色にしてさしあげますから抵抗しないと約束して下さい」
「また吾の胸に接吻するのか。吾は恥ずかしいのじゃ」
「お約束下さい、姫君。僕に任せると」
部族の姫は涙を流して頷いた。美白仙は残りの乳に吸い付いた。
姫は眉根を寄せて歯を食いしばり、必死に耐えている様子。
だが次第に手は美白仙の後頭部に廻して撫で擦るように動いた。
「ああ……もう、耐えられぬ。魂が抜けて行くようで吾は怖いのじゃ」
目を閉じて花のような唇を半開きにすると、深い溜息が漏れる。
閉じた瞼の中の眼球がピクピクと動いたとき、美白仙はやっと姫の胸から顔を離した。
「姫君、これで胸は終わりましたが、まだ恥部が残っております」