君の出した答え-1
一晩中芽衣子の寝顔を見つめながら、俺はやっと答えを出した。
俺は芽衣子に手をかけることは一切やめることにした。
俺のワガママで彼女の未来を奪うことは許されざることだと今さらながらに気付いたのだ。
本当に芽衣子のことを愛しているなら、彼女のこれからの幸せを願うことだろう。
でも、このまま成仏して、芽衣子とお別れしてしまう勇気がまだ無い俺は、せめて人間ランクで生まれ変われる最後の日までは、芽衣子のそばにいさせてもらうことにした。
人間に生まれ変わることを選んだのは、わずかな可能性でもいつかまた芽衣子に会いたいという望みだけがどうしても捨てられなかったから。
やはり、できるものなら生まれ変わっても芽衣子に会いたい。
もう恋人になれなくてもいい。
たった一目でも芽衣子に会えるなら、どんなひどい境遇で生まれ変わっても構いやしないとすら思うほどだった。
そんな俺の想いとは裏腹に、芽衣子は久留米に告白された翌日から大量に段ボールを買い込み、荷物をまとめ始めた。
芽衣子は死んだ俺より、生きている久留米を選んだ。
これが、彼女の出した答え。
荷物を片付け始めた芽衣子を見ては、何とも言えない気持ちが込み上げてきたが、それを責め立てる資格など、散々芽衣子を泣かせてきた俺にはない。
芽衣子の心の中にはもう俺がいないんだと思うと、今まで芽衣子に対してやってきたひどい仕打ちにひどくほぞを噛んだ。
勝手だけど、たまに俺のことを思い出して泣いて欲しかった。
でも芽衣子は一人でアパートにいても、涙一つ流さないでいつも通りに過ごしている。
今までの俺ならきっと、それを“薄情だ”と罵っていたけれど、彼女を薄情にさせるほどひどいことをしてきた俺は、何も言えなかった。
まだまだ純粋に芽衣子の幸せを願えるほど、気持ちは割り切れていないけど、この限られた時間の中で少しずつ自分の気持ちに整理をつけていかなければいけない。
芽衣子を幸せにできるのは、もうアイツしかいないのだから。