君の出した答え-5
きっと無意識のうちに腹を決めることができたから、ようやく二人に対して嫉妬の感情が薄れてきたのだと思う。
この分なら、明日サヨナラするときにはコイツらに“おめでとう”って笑って言えるかもしれないな。
そんなことを考えながら俺は、ファミレスで食事を終えた芽衣子と久留米をぼんやり眺めていた。
「大分荷物が片付いたな」
久留米はくわえ煙草に火を点けながら言った。
「うん、明日の午前中に引っ越し屋さんにまとめて持ってってもらう」
「わりいな、トラック借りてオレが全部運び出せばかなり安上がりになるんだけど……。
あー、なんで土曜日なのに仕事あるんだろ。
午後からなら手伝えるんだけどな」
久留米は煙草の煙を天井に向かって吐き出しながら残念そうな顔をした。
「さすがにそこまで甘えられないよ。
ちゃんと自分のことは自分でしなきゃ」
芽衣子は、そんな奴を見ながらクスクス笑う。
「茂の荷物はどうすんだ?」
芽衣子は俺の名前が出てくると、顔を俯かせ少し気まずそうに、
「明日、茂の実家に送り返す予定。
そんなに荷物もなかったし」
と、申し訳なさそうな声で言った。
「……そうか」
久留米はどことなく気まずそうに俯いた。
このまま芽衣子と暮らすことを申し訳なく思っているのだろうか。
少し前の俺なら、きっと久留米に文句つけまくっていただろうけど、今ならこんな風に俯くコイツに“気にすんなよ”って言ってやれる。
まあ実際は、声が届かないってのもあるし、そんなクサい言葉なんて気恥ずかしくて言えないけど。
「じゃあ、あとは明日を待つのみか。
引っ越しって午前中で終わる予定か?」
「うん。家電は大体譲ったりしたし、荷物も結構捨ててかなり少なくなったからすぐ終わりそう」
「なんだ、全くオレの出番ナシか。
いいとこ見せたかったんだけどな」
奴はククッと笑って煙草をもみ消した。
芽衣子もつられて笑っていたが、ふと何かを思いついたように、
「ねえ、それじゃあ午後からドライブ行きたい!」
と、テーブルに身を乗り出して言った。
「……荷物到着すんの待たなくていいのか?
同じ市内で引っ越すなら荷物はすぐ届くんじゃねえの?」
久留米は不思議そうな顔を芽衣子に向けた。
しかし芽衣子は首を横に振ってから、
「いいじゃん、ここ最近色々ありすぎたからちょっとだけ現実逃避したいの」
と、顔の前で掌を合わせてイタズラっぽく舌を出した。
久留米はそんな芽衣子の表情に弱いらしく、顔を赤らめて彼女から目を逸らした。