君の出した答え-4
まさかこの俺が女に振られたくらいで泣くなんて。
元々恋愛にあまり執着しなかった俺だけど、それなりに彼女という存在は間を置かずにいたと思う。
ただ、彼女ができてもイベントや誕生日などの記念日をないがしろにしたり、男友達ばかりを優先してほったらかしにすることが多かった。
そのせいで、芽衣子以外に付き合った女はどいつもこいつも、そんないい加減な俺に次第に愛想を尽かし、別れたいと言い出してきた。
俺も俺で別れたいと言われた所で、すがることもなくアッサリ別れを受け入れる始末。
恋愛なんてこんなもんかと妙に冷めた感情を持って生きてきたつもりだった。
それなのに、芽衣子との恋がこんな形で終わりを迎えると思うと、悲しくて、自分のしたことが悔しくてたまらない。
もし生きていたならば、泣いてすがるような醜態を晒してでも別れたくないと駄々をこねていただろう。
つくづく俺は芽衣子に心底惚れていたんだなあ、と全て失ってから初めて気付くことができた。
「そろそろ飯行くか」
グラスの中の烏龍茶が空になった頃、久留米が腕時計を見てからそう言った。
キッチンに置かれていた調理器具も段ボールにまとめたり、使い古したものは処分したりしてしまったから、二人はこうして夜は外食することが日課になっていた。
芽衣子は嬉しそうな顔で頷き、立ち上がった。
あんなことがあって、もう夜に出歩けないトラウマでもできたんじゃないかと心配していたが、芽衣子は久留米がいれば平気なようだった。
久留米はちゃんとアパートまで芽衣子を送り届けるし、彼女を夜道に一人にすることは決してしなくなった。
これから芽衣子が引っ越す予定の久留米のアパートは、わりと駅からも近いし、大通りに面しているから比較的安全である。
少し騒がしいのが難点だけど。
彼女は俺なんていなくても、久留米がいればもう大丈夫なのだ。
やっと、やっとこんな風に思えるようになってきた。
この域に至るまでに、何度後悔し泣いてしまっただろう。
そんな諦めの悪い俺が、ようやく気持ちに整理をつけられてきたのはきっと、明日が人間ランクで生まれ変われる最後の日だからかもしれない。
つまり明日の午後4時18分までには、コイツらとお別れして成仏しなくてはいけないのだ。