君の出した答え-2
久留米は相変わらず仕事帰りに芽衣子のアパートに顔を出していた。
奴が登場すれば、ため息を吐きながら黙って席を外してやるいつものパターンが始まる。
ガックリと背中を丸めながら部屋を出て行こうとする俺に、ある日園田はポツリと、
「手島さん、この二人がやらしいことしてたのは、あなたが私に見張らせたあの日だけですよ」
と教えてきた。
俺は意外そうな顔で振り返って、少し申し訳なさそうな園田の顔を見つめた。
どうやら久留米は、流れで芽衣子を抱いたあの日から彼女に一切手を出していなかったらしい。
これは園田の確認済み。
つーか、人に散々覗きはダメだと言いながら、アイツが覗きやってたんじゃねえか。
なぜ久留米が芽衣子に手を出さなかったのかは、おそらく曖昧な関係のままズルズルするのが嫌だったからだと思う。
ちゃんと段階を踏まえ、胸を張って恋人同士だと言えるまではこれ以上は手を出さないつもりだったのではないか。
園田がそれを俺に今まで言わなかったのは、サッサと芽衣子を諦めさせて成仏させたかったかららしい。
そんな園田にムカついてしまったものの、奴は奴なりに、懸命に気持ちに整理をつけようとしている俺に、少しでも久留米に対する負の感情をなくして欲しくて、真実を教えてくれたのだろう。
確かに久留米にめちゃくちゃ嫉妬してたし、憎たらしくも思っていた。
でも久留米の誠実な所、一途な所はきっと俺が一番よくわかっている。
表面上は芽衣子を狙う久留米に散々悪態を吐いていたけど、やっぱり俺はコイツのことも大好きで、大切な親友だと思っている。
そんな奴のことをいつまでも恨んでなんかいちゃいけない。
もちろん芽衣子にも幸せになって欲しいけど、久留米にも幸せになって欲しいから。
コイツらが幸せになるためのレールはすでに出来上がっていて、まさに今から走り出そうとする所であろう。
あとは俺がそれを笑顔で送り出せれば御の字なのだ。
そんな俺の覚悟を知らずに、久留米は玄関から見える重ねられた段ボールを見てはデレッと頬を緩ませていた。
黙ってりゃなかなか男前のコイツも、芽衣子の前での締まりのない顔が可笑しくて、少しだけ淋しかった。