君の出した答え-19
オヤジは腕組みしながら久留米に詰め寄り、
「おい、少し膝曲げろ」
とドスのきいた声を投げかけた。
「な、何でですか……?」
「いいからいいから」
オヤジはニイッと黄ばんだ歯を見せながら、久留米の肩をポンポン叩いた。
オヤジの笑みにつられ、久留米もひきつった笑いを浮かべつつ、言われた通りに恐る恐る膝を曲げた。
その瞬間、オヤジはにやけた顔を一変させ、般若のような形相で、
「お前なあ……、スーツ着てるってことは立派な社会人だろうが!
いい年して周りの迷惑ってのも考えられんのか、このアホが!」
と怒鳴りつけ、久留米の頭に思いっきり拳骨を振り落とした。
「ってえ……」
オヤジの拳骨は相当痛かったらしく、久留米は頭を撫でながら少し涙目になっていた。
そして、その涙目のまま奴はジロリと芽衣子を睨んだが、彼女は素早くオヤジの後ろに回り込んで、顔の横でヒラヒラ手を振って舌なんか出していた。
「うわあ、有野さんヒドすぎですね。これが本性だったのか……」
久留米を哀れがる園田とは対照的に、俺はゲラゲラ笑いながら、
「ナーイス、芽衣子! よくやった」
と彼女に向かって拍手した。
「まるで女版手島茂ですね……。
久留米さん、考え直した方がいいんじゃないかなあ」
園田が軽蔑したような眼差しで芽衣子を見てそう呟く。
園田のそんなぼやきが耳に入ると、拍手していた俺の手が知らず知らずに止まり、笑い声も自然とフェードアウトしてしまった。