君の出した答え-15
上を見上げれば雲一つない綺麗な夜空。
遠くでは都会のネオンがギラギラ街を照らしており、この辺りは月明かりが寝静まる住宅街を優しく照らしている。
月明かりが、見つめ合う二人をやけに鮮明に映し出し、この静かな河川敷で二人にスポットライトをあてているかのようだった。
久留米は芽衣子の両肩を掴むと、徐に顔を傾け近づけていった。
「ほら、またコイツはすぐに芽衣子に手を出そうとする!」
「だって、有野さんは久留米さんを選んだんですよ。
キスくらいいいじゃないですか」
「ダメだっての! コイツは根がドスケベなんだから、キスだけで済ますわけねえんだよ!」
俺はキッと園田を睨みつけ、久留米の身体を指差しながら必死に訴えた。
「いやあ、辺りに人がいないとはいえ、久留米さんがまさかそんなことするわけないでしょ」
一笑に付した園田は聞く耳持たずと言った感じで、あくびしながらそっぽを向いた。
「お前は久留米のこと買いかぶり過ぎなんだよ!
コイツは今でこそ真面目な好青年演じてるけどなあ、隙あればいつでもどこでもってぐらいのケダモノなんだぞ!
高校ん時に付き合ってた女とは、ヤる場所がなかったからって、ひたすら外でしかしなかった強者なんだよ!」
俺の言葉に、さすがの園田も驚愕の顔を奴に向けていた。
「まさか……」
「マジだって、コイツは俺以上にえげつねえぞ!
あーっ、芽衣子が久留米の毒牙にかかっちまう……。
芽衣子ぉー、生理だって嘘吐け、嘘!」
ゆっくり久留米が芽衣子に顔を近づけていく横で、俺は届かない声を必死で張り上げていた。
そんな俺の横で園田は、
「まったく、ここ最近は神妙な様子だったのに、またいつもの手島さんに戻ってしまいましたね。
一旦認めたんなら、二人がどうしようがそっとしといてあげればいいのに……。
こうも往生際悪く騒ぐのなら、おとなしいうちにサインしてもらえばよかったかな」
と、悔しそうにスーツの胸ポケットに折りたたんである成仏申請書をチラリと見た。
「うわあっ、ダメだあ!
神よ、俺に力を貸してくれえ!」
すっかり呆れた様子の園田の横で、俺は胸の前で両手を組み、必死に虚空に向けて叫んでいた。
二人が愛し合っているなら、いちゃつくのは仕方ないとわかっていても、やはり感情が追っ付かない。
やっぱりこういうことは俺が成仏してからにして欲しい。
そんな勝手なことを思いながら、いるかいないかわからない神の存在に、俺が祈りを捧げていたその時だった。