君の出した答え-12
ロケット花火が終わって再び静寂が戻ると、今度は芽衣子はコンビニのレジ袋から爆竹を取り出してきた。
「ああっ! それはさすがにヤバいから、今は止めとこうな!」
その様子を見ていた久留米は、慌てて芽衣子から爆竹をひったくるように奪い取った。
「ちょっと、返してよー!」
芽衣子はムキになって久留米の手から爆竹を取り返そうとするが、奴は芽衣子に取られないように爆竹を持った手を空に向けて伸ばしてしまった。
「これはダメだって!
また明日の昼間にでもやろうな!」
久留米はそう言ってなんとか諦めさせようとするが、芽衣子はピョンピョン跳ねて奴の手から爆竹を奪い返そうと躍起になっていた。
そんな芽衣子の動きが小動物みたいで、クスリと笑えてくる。
しばらくそうやって久留米と格闘していた芽衣子だったが、一歩も退かない奴にとうとう諦めたようだ。
「久留米くんのケーチ」
と、捨て台詞を吐いた芽衣子は、頬を膨らませながら他の花火を物色し始めた。
そして、ネズミ花火を取り出した芽衣子はニッと不敵な笑みを奴に見せると、素早くそれに火をつけて、久留米の足元に放り投げた。
「おいっ、バカやめろ!」
久留米は慌ててシュルシュル回るネズミ花火から逃げ出すが、さらに逃げる方向に向けて次々と火のついたネズミ花火を投げ込んでいった。
慌てふためく久留米を見てケラケラ笑う芽衣子。
「……とんでもない女性ですね。
あなた、こんな非常識な女性とよく6年も付き合ってきましたね」
園田は呆れたように俺を見てから、ハッとした顔になった。
「……いや、芽衣子はこんなバカな真似するような女じゃねえんだ」
なぜだか声が震えて、目頭がツンと熱く痺れてくる。
俺の知ってる彼女は、バカだけど非常識ではない。
それなのに、こんなバカな真似してはしゃいでいる芽衣子を見てると胸がいっぱいになってくるのだ。
らしくねえじゃん、芽衣子。
お前はいつも俺がバカやってるのを見て笑ってるだけなのに、似合わないことしてんじゃねえよ。
危うく涙がこぼれ落ちそうになったが、心配そうな顔をしている園田の前で、かっこわるい所なんて見せられない。
「よし、芽衣子も大分俺の教えを守るようになってきたんだな」
俺はわざとおどけて、逃げ回る久留米を指差しながら笑った。