君の出した答え-11
「久留米くん次はこれね、ライター貸して」
まるで流れ作業のように手持ち花火に火をつけていた芽衣子は、手持ち花火に一区切りつけると今度はロケット花火の袋を開けた。
「おい、もう夜も遅いしさすがにロケット花火はまずいだろ」
ライターを貸し渋る久留米の言葉など耳に入っていない彼女は、等間隔にロケット花火を地面に浅く差し込んでいた。
「いいのいいの!
あたしが火をつけるから、久留米くんはそこでゆっくり見てなよ」
そして、ズラリとロケット花火を並べ終えた芽衣子はそう言って、久留米の手から強引にライターを奪って、ロケット花火に次々に火をつけて行った。
まだ手持ち花火の煙がほんの少し辺りに残っていて、心なしか白くもやがかかった空間を切り裂くように、ロケット花火が勢いよく川の方へと飛んで行く。
10本ほどあったロケット花火は、時間差で次々にピュウッと鋭い音を立ててはパンッと弾けた音を出す。
久しぶりに聞いたロケット花火の音は思ったよりも大きくて、静かな夜の闇にやけに響く。
遠くで鳴るロケット花火の音を聞けば、夏なんだよなと感慨深くもなるが、近くで聞くと結構はた迷惑かもしれない。
俺と園田はたまらず人差し指を耳の穴に突っ込んだ。
「こんな夜遅くに、ご近所迷惑っての考えないんですかねえ」
はしゃいではロケット花火に火を点けていく芽衣子を見つめながら、園田がぼやく。
「まあ、これくらいいいじゃん。
俺ならもっとロケット花火買い込んで、一気にまとめて火を点けるし、これくらい可愛いもんだろ」
俺は、眉をひそめている園田を宥めるように笑いかけた。
「あなたがそうだから、有野さんも非常識になってしまったんですかね」
園田の言葉に、ふと笑いが止まる。
そもそも芽衣子は、俺のバカな行動にケラケラ笑うことが多いけど、自らこんな風に周りの迷惑を考えないバカな真似をするような奴じゃないはずだ。
それなのに、まるで俺が乗り移ったかのように非常識な行動をとる芽衣子。
知らず知らずのうちに芽衣子が俺色に染まっていたのだろうか、そのことが少し嬉しくなって
「まあ、6年も一緒にいりゃ行動や考え方だって似てくるだろ」
と、鼻の下を指でこすりながら、園田に向かってヘヘッとイタズラっぽく笑ってやった。
そして園田はそれを見てから、
「ホント、どうしようもないカップルですね」
と皮肉を込めながらも、なぜかニヤリと笑って俺と芽衣子を交互に見やった。