ふちは瀬になる-2
ハルト先輩のように紺のリクルートスーツを着ていた。
黒のローヒールはとても大人っぽく見えた。
「なんで先に行っちゃうの?一緒に食べようよ」
お盆を持ってこっちに近づいてくる綺麗な女性。
「チッ。麻子か」
レン先輩の小さな小さな一言で
この女性がハルト先輩の元カノだと分かった。
「他で食べろよ」
麻子さんに聞こえるように不機嫌な声でレン先輩は言う。
「レン。久しぶり。いいじゃない。一緒に食べても。
今、春人と同じ会社に説明会に行ってきたのよ。
会場でばったり会って。一緒に帰ってきたの」
「あっそ」
一緒だったんだ・・・
ビクッとする私をそっと見るレン先輩。
綺麗な女性だと思った。
とても大人で・・・・私とは正反対。
麻子さんは私ににっこりして「一緒に食べてもいいわよね?」と聞く。
私は・・・・
何て答えたらいいんでしょうか?
何も答えられないでいると、当たり前のようにハルト先輩の前に座った。
「今日の会社、どう思った?」
「いいと思うよ。若い人を引き上げようって会社の熱意がいいよな」
「あ。私もそれ感じた。3番目にスピーチした人が特に良かった」
「だよな。あの人良かったよな」
同じ席に座ってもこれじゃぁ、意味ないよ?ハルト先輩。
麻子さんが席に着いた途端に
今日の会社のイメージを話し出したら
ハルト先輩はそのまま就活の話にのめり込んだ。