君を諦めたくない2-9
再び画面がトップメニューに切り替わり、『アンチェインド・メロディ』が流れ出し、俺は我に返ったように手の甲で目元をゴシゴシこすった。
芽衣子には俺の姿が見えなくても、なんとなく泣いてるところを見られたくなかったのだ。
俺は、鼻を何度かすすりあげ、震える涙声を無理に押し隠すようにわざと明るい声で笑いながら、
「いやあ、食わず嫌いもよくねえな。
結構いい映画だったじゃん、ガラにもなく泣いちまったよ」
と、芽衣子の方を向きやった。
しかし。
「……なんだよ」
見れば、芽衣子は壁にもたれかかったまま、スースー寝息をたてていた。
「お前、寝てたのかよ」
呆れた顔ですっぴんのあどけない寝顔を見つめた。
「あれだけ一緒に観ようってうるさかったのに、いざ俺が最後まで観れば今度はお前が居眠りかよ。
マジ、タイミング合わねえな」
嫌みをいいながらも、少し口を開けて眠る芽衣子の顔を見てると、また鼻の奥が痛んでくる。
「今日は色々あったからな。
疲れちまったか」
俺は、芽衣子の体をそっと抱きかかえた。
腕にストンとのしかかる重さがなんだか心地よい。
そしてそのままベッドに寝かせ、足元でたわまっていたタオルケットをふわりとかけてやった。