第六話(エピローグ)-1
高校を卒業して六年が経過した。
「いらっしゃいませ〜」
最近オープンしたばかりの定食屋に入る。客席が六つしかない、とても小さな定食屋だった。
「オススメは?」
「クリームパスタですかね。とても美味しいですよ」
可愛らしい女性店員のオススメを聞きつつ、胸元にあるネームプレートに目をやり、ぎょっとした。
『溝口 深雪』
溝口。ヨッシーの苗字と同じ。
「すいません。ここの店長さんの奥さんですか?」
「え?はい。式はまだなんですけど」
「店長さんは?」
「厨房にいますけど・・・あの、良明の知り合いの方ですか?」
「はい。高校時代の親友です」
「高校時代の・・・?もしかして、寿 凌駕さん、ですか?」
「はい」
「やっぱり!あの、今呼んできますね!」
そう言って厨房のほうへと姿を消す深雪さん。
この定食屋は、ヨッシーこと溝口 良明が経営しているとても小さな定食屋。先月オープンしたばかりという噂を聞きつけ、約束がてらやって来たというわけだ。
「おぉ。本当にリョウだ」
「よっ。久しぶり」
厨房から姿を現したヨッシーは、高校の卒業式で見た時よりも、はるかにお腹が膨らんでいた。
「結婚したんだってな。おめでとう」
「ありがとありがと〜。見てよ僕のお腹。子どもがいるんだ」
「そうか。深雪さんのお腹の中に子どもがなぁ」
「うわ、リョウにスルーされた」
「元気してたか?」
「うん。見てのとおり。そっちは?」
「ぼちぼちかな。唯には振られちまったし」
「ユイから聞いてる。一度もセックスしてないんだって?そりゃあ振られても文句言えないね。というかよく我慢できたね」
ヨッシーのやつ、今ものすごくナチュラルにものすごいことを口にしなかったか?
「それより腹減った。クリームパスタひとつ」
「わかった。十分以内に持ってくる」
厨房へと消えるヨッシー。
とそこへ、入り口の扉が開かれた。
女性客が入ってきて、俺のすぐ隣に座った。
「いらっしゃいませ〜」
深雪さんが厨房から戻ってくる。
「生ひとつ」
「すいません。ビールは置いてないんですよ。日本酒ならあるんですけど」
「ならそれで。一番安いやつ」
「かしこまりました〜」
再び厨房へと消えていく深雪さん。