第五話-1
午後六時。場所はいつものように俺の部屋。
少し前に、ユイを保護したと烏丸さんからヨッシーの携帯に電話があったので、そっちのほうは大丈夫だろう。
「それで。烏丸さんのこと、きちんと話してくれるのよね」
「うん。全部話すよ」
烏丸さん。烏丸・・・静江さん、だったか。三十代、若くても二十代後半くらいの、スラリと背の高い女性。
「えっと、質問形式にしようかな」
「よし。なら俺から。烏丸さんがユイを引き取らなかった理由は?」
「ユイのご両親が亡くなったのは、ユイが六才の時・・・っていうのは知ってるよね」
「えぇ」
クラコは頷く。だが俺は知らない。ユイからは『数年前』としか聞いていない。けど六才の時というと、数年前どころか十数年前じゃないか。
「ユイは、ご両親と暮らしたあの家から離れたくないみたいで、それを見かねた若い頃の烏丸さんが、私が育てるとかなんとか言って、彼女の両親や親族と何度も話しに話し合った結果、今の状態に落ち着いたみたいだよ」
「若い頃って、烏丸さんはいくつなの?今も十分若くみえたけど」
「三十五って言ってたかな」
「思ったよりは、結構おばさんなのね」
烏丸さんの年齢なんてどうでもいいっての。
「ヨッシー。それじゃあ答えになってない。育てるって言ったんなら、あの家で育てることだってできたはずだろ?」
だけど烏丸さんは、それをしなかった。影から見守るだけ、恐らくは金銭的に援助しただけで、ユイに会おうとすらしなかった。
「それは誤解だよ。烏丸さんはね、何度もユイに会いに家に行っていたんだよ」
「? でもユイは、身内はいないって言ってたぞ。その話だと、烏丸さんと面識はあったってことになるよな?」
「うーん。烏丸さんの話によると、ユイが中学生にあがる頃に、ユイに言われたらしいよ」
「なんて?」
「もう来るなって。パパとママに近付くなって。もっと前から言われてたみたいなんだけど、その頃から言い方がキツくなって、悩んだ末に経済面で支援するだけにしたみたい。だから、悪循環だけど、見捨てられたと思ったんじゃないかなぁ」
踏み込んでほしくなかったとしても、独りにはなりたくなかった。烏丸さんが来なくなって、親戚にもとうとう見放されたと思ったわけか。