第五話-6
「ご、ごめんリョウ。やっぱり、何言ってるかわかんないや。わかるように、説明してよ」
「ああ。わかるまで、頷いてくれるまで説明してやるよ」
十年という期限付きの恋人関係を築き、ユイが孤独だった十年間の穴埋めをする。期限が満了し、それでもまだクラコが俺のことを想ってくれていたのなら、その時はクラコと結婚する。
説明して、なんて自分勝手な物言いだろうと吐きそうになった。これじゃあクラコに最低と言われても仕方がない。
「そんなこと、してもらわなくても、私にはもう、烏丸さんがいるし、みんなだっている。大丈夫だよ」
「お前の初恋の相手である俺が、恋人になってこれから十年を一緒に過ごしてやるってんだよ。素直に頷け」
「初恋なんて言った覚えはないけど・・・。頷けって言われて、頷けるわけ、ないじゃん・・・」
どうしても頷く気のないユイ。
それも当然か。ユイの親友はクラコで、クラコの彼氏は俺なのだから。
「じゃあこうしよう。先にクラコを説得する。もしクラコが納得してくれたら、俺の提案を受け入れろ」
「だから、納得なんてするはずないじゃん!馬鹿なの!?死ぬの!?」
「絶対に納得させてみせるさ。たとえ失望されてでもな」
「っていうかそれ、悪循環だよ。私が幸せを感じている間、クラコはどうなるの?寂しくさせるだけだよ」
ユイの十年は孤独だったかもしれないけど、これからのクラコの十年は孤独なんかじゃない。少なくとも俺とは疎遠になるかもしれないけど、ユイとも疎遠になるかもしれないけど、ヨッシーという友達がいる。
ユイの感じた十年とは違う。その過程でクラコがヨッシーのことを好きになったとしても、何も文句は言えないが。
「はぁ。ホント、最低よね」
その声は、突如現れたメガネ女・・・もちろんクラコから発せられたものだった。
「どうして私、こんな奴のこと好きになっちゃったんだろ」
呟くようにそう言って、もう一度大きなため息を吐くクラコ。
「クラコ。俺たちの会話、聞いてたんだよな?なら話は早い。十年だけでいい。俺と別れよう」
「・・・わかった。なんて言うわけないでしょ」
クラコはやはり、納得なんてしてくれるはずもなかった。
「十年だけって簡単に言うけど、それ、小学校に入学して中学校を卒業しちゃうくらいの期間なのよ?」