第五話-2
「ねぇ。烏丸さんは、経済的に余裕のある人なの?」
「え、どうだろう。ユイのこと以外は、基本的に聞いてないからなぁ」
あ、そうか。ユイのことばかり気に取られていたけれど、烏丸さんには烏丸さんの生活があるんだ。それもえっと、十二年前?つまり彼女が二十三歳の時というと、経済的余裕があったとは到底思えない。
「ヨッシー。さっき『ユイはあの家から離れたくない』って言ったわよね」
「え、うん。ご両親のこと、忘れたくなかったんだろうし」
「そう・・・」
「クラコ?何か気になることでもあるのか?」
「なんでもない。些細なこと」
なんだろう。すごく気になる。
「そういえば、さっきユイは『みんな嘘つきで、みんな意地悪だ』って言ってたよな。あれってどういう意味だ?」
「・・・ごめん。嘘つきなのは、多分私」
「というと?」
「ユイと喧嘩した時に言ったのよ。『ユイが告白すれば、結果がどうあれ私はリョウと別れる』って」
「は?おい、なんでそんなこと言ったんだよ」
「だってあの子、私が何度『リョウに告白して、きっぱり振られてきなさい』って言っても、絶対にイヤって言うんだもの」
ん?ううん?
「ちょっと待て。ユイに俺のことは諦めろと言いに行ったんじゃないのか?」
「そんなこと一言も言ってないけど、結果としては同じことになるわね」
結果が同じでも、俺が思っていたのとやり方は違ったのか。
「いつからユイが、あなたたちが覗いてたのか知らないけど、私はユイの前でリョウに言っちゃったのよね」
別れる気はない。
たしかに、クラコはそう言っていた。結婚しようと言っても、断りはしなかった。
「だから『嘘つき』か。じゃあ意地悪なのは・・・」
「烏丸さん、僕たち以外の人を連れてきた僕、だろうね」
「・・・」
烏丸さんは、六年ほど?ユイの家に行っていた。ユイにはそれが、嬉しかった、のだと思いたい。でも中学生になる頃にキツいこと言って、会いに来なくなって・・・自分のせいとはいえ、今さら何しに来たーってことなのか。
「あ、ヨッシーが言っていた秘策って、烏丸さんのことだったのね」
「今頃気付いたのかよ」
「うるさい。リョウに言ってない」